・学科長の抱負 〜新学科体制における〜
・京都ノートルダム女子大学に望むこと 〜創立
40周年を迎えて〜
英語英文学科 学科長 服部昭郎
はじめに
京都ノートルダム女子大学は4学科体制に移行し、色々な面で学内の様子が大きく変化しています。この新たな流れの中で、唯一の既存学科である英語英文学科
も、その教育・研究の質的転換を求められています。その具体的な動きの一端を紹介します。
学部プログラムの充実
英語英文学科は分野構成やカリキュラムの見直しを進め、そ
の改良をめざしています。従来の「エイブンカ」のプログラムは、文学や言語学など、机の上に英語の書物を置き、読み、考え、そして書く、ことを主とする
「学び」から成り立っていました。現在進行しているプログラムの改良は、そのような「学び」の大切さを受け継ぎつつも、むしろ、書物に代わって人を相手
に、英語によって自分の意志を伝え、そして互いに了解し合うことができる対話の能力の「育て」を目指すものです。教育の内実を知識の「学び」から、行いの
「育て」ヘと転位させようとするものです。
具体的には、英語運用能力育成のために「読み書き」訓練を統合したクラスの新設、またワークショップ
形式クラスの試みなどがその一端です。また、新しい「英語スペシャリスト」分野は、上述のプログラム改良の主眼点を特化させ、実際的な英語運用能力を専ら
育成するためのコースです。
セルフ・アクセス英語学習スタイルの導入
英語プログラムの新しい特徴のひとつがマルチメディア環境によるセルフ・アクセス英語学習スタイルの導入です。
先ほど、英語プログラム改良の指
針が、「学び」から「育て」ヘの転位にあると書きましたので、ここでもそのような言葉に託して言えば、このセルフ・アクセス英語学習スタイルは「育ち」を
助けるものだと言うことができます。「育ち」とは、学生諸君の自立を促す言葉です。セルフ・アクセス学習では、何を習得するか、どのように習得するか、あ
るいは習得の結果の評価をどのように行うか、などを学生諸君自身が組み立て、そのアイデアを基礎に、コンピューターを媒体とするマルチメディア環境で学習
を行います。「育ち」を促すとは、従って、学生諸君自身がその学習に能動的な責任を負うことを促すことに他なりません。
具体的には、学術情報セ
ンターにおける言語学習サポートがそれです。基礎的な英語の再学習プログラム、英語の標準テストにむけた訓練プログラムなどです。オンラインでのリモート
学習も可能です。言うまでもありませんが、これは英語英文学科の学生諸君だけでなく、全学の学生諸君すべてが利用できる学習環境です。
大学院の準備
英語英文学科を基礎とする大学院「応用英語」専攻(仮称)の設立
が現在進められております。大学院「応用英語」の教育・研究のねらいを要約すれば、ここでもやはり、英語を「学ぶ」から英語で「行う」ヘの転位を図るこ
と、となります。別の表現を使えば、学生諸君の英語を「外国語としての英語」から「第2言語としての英語」の能力へと質的に高めることを基本的なねらいと
しています。
そのような英語運用能力を身につけつつ、学生諸君は様々な課題研究も行います。大学院「応用英語」が提供するコースは大きく2つに
分類されます。国際的なビジネス、あるいは文化交流など、高度な英語運用能力が求められる分野で専門職を得ようとする学生諸君のために用意されたいくつか
のクラス群、さらに英語教育の理論と実践研究を経て、より高度な見識を備えた英語教育専門家育成ための様々なクラス群からなるものです。
これら
2つのコースは決して分離された通り道ではなく、上述の「第2言語としての英語」力を充実させ、さらに専門的な領域での「行い」を実践するために相互補完
的に位置付けられるものです。最後に、「応用英語」専攻は男性学生を受け入れます。また社会人にオープンな教育・研究環境として昼夜間開講制となります。
以上が新たな英語英文教育をイニシエイトする3つの方向性です。
5月29日(火)本学後援会総会が開催され、多数の保護者の方々にご出席いただきま した。終了後、学長室で、会長、副会長に学長を交えて、京都ノートルダム女子大学の現状と今後のあり方について、自由に歓談いただきました。
【玉置】
いつの時代もそうでしょうが、今は特に価値観が多様化して社会の規範
というものが曖昧になり、自我と現実との相克に苦しんでいる人が多いように思います。大徳寺に一休禅師の「諸悪莫作 衆善奉行」という一双の屏風がありま
すが、何が悪か、何が善かを知るには、私は道徳だけではなく宗教心が必要だと思っています。
皆さんせっかく縁あってキリスト教の大学に入られた
のですから、在学中に一度は聖書を読んで欲しいと思うのですが、どのような授業をされているのですか?
【学長】
「人間と宗教」「聖書学」などは共通教育科目の必修になっていますが、
若い学生請君に「キリスト教は愛の宗教です」と言ってもあまりピンと来ないのが現状でしょう。キリスト教でいう愛はアガペー(無私の愛)であって、エロス
(執着の愛)、恋ではありません。単なる理論としてではなく、4年間の学生生活の中で、カトリックの精神を感覚として掴んでもらえればと願っています。ミ
サというキリスト教の儀式を大学行事の中で行うことがありますが、仏教でも神道でも宗教的儀式というものはシンボルの体系なのです。聖歌の合唱の際出会う
聖句の一節であっても特有のシンボリックな意味を持ち、今すぐ理解されなくても、後で必ず一人ひとりの心の中に蘇ってくると思います。
【仲田】
親のエゴかも知れませんが、子供にカトリック精神に基づいた、誠実、
賢明、清純な人格形成と、内面からの美しさや、優しさを放つ気品のある女性に育って欲しく、中学校、高等学校、大学とミッション系の学校に進学してくれた
事を喜んでいます。と共に、多くの収穫をしっかりとつかみ取って卒業後は誇りをもって事に当たってほしいと思います。
【玉置】
昔は、素読といって小さく意味も分からない頃から論語などを暗誦させる
教育方法がありましたが、私は今でも大切なことだと思います。私は洗礼は受けていませんが、何度もイエスの教えに救われた経験がありますので、子供にも勧
めるのですが、なかなか難しいですね。
オウムなどの影響で宗教というだけで毛嫌いする人も多いですから、例えば英語英文学科でしたら、欽定訳聖
書を古英語の教材として使うとかして、自然に聖書に親しませるなどという方法は如何でしょうか。
【学長】
授業で使うとなると敬遠するでしょうか。本学では朝の8時55分と午後
1時5分に校内放送で聖書の詩編を音楽(合唱)の形で流していますが、詩編はユダヤ民族何干年の歴史の中で磨きあげられた文学ですので自然に親しめます。
また、儀式の際にも必ず聖書を朗読していますが、おっしゃるようにもう少しいろいろ考えるべきでしょう。
【北村】
わたしの家庭では、子供達が、既に本学を卒業して相当年数が経っており
ますので、この対談に参加する資格がないようなものですが、今また孫が二人ノートルダム小学校にお世話になっております。二人の娘は本学を卒業しました。
ノートルダムの生徒さんは上品さと優雅さを持たれていると思います。これは小学校、中学、高校と一貫して教育され、そういう雰囲気の中で育って来て、それ
が、大学でも、卒業しても身についているのですね。本学の卒業生は、やはり違うな、優雅で上品だなと思う時がありますね。それと本学は昔制服でしたね。今
の世の中、時代の変化からいうと制服は一寸時代に逆行するようにも思います。しかしずっと本学創立以来制服を続けて来られたということは意味のあったこと
だと思いますが。
【学長】
過日、本学同窓会の総会に
出席いたしましたが、卒業生の方々は、独特の優雅さ、上品さを身につけておられるのを感じました。これは大事にしていかなければならないと思います。男女
共同参画社会ということで、機会均等のことばかり言われ、また、女性のおじさん化がよく話題になります。男性の習慣をそのまま自分たちもして、それで解放
されたかのような錯覚を持つというわけですね。例えば、女性だけで大酒を飲んで酔っ払って大騒ぎする、女性だけで競輪、競馬のギャンブルをして騷ぐとい
う、昔から男性の中でもあまり上品でない人がしていた行いを女性がすることで、女性が解放されたかのような錯覚を持つのですね。これはとんでもないことだ
と思います。
能力と意欲のある女性は、社会にあっても男性に負けない仕事をすべきだと思いますが、慎み、上品さというものは絶対必要だ
と思いますね。40年間京都ノートルダム女子大学が育ててきた特色はこれからもいっそう大事にしていかなければなりません。そういう意味で制服は、華美に
流れないという大事な要素があったのですね。今はもう制服というわけにはいきませんが、その精神は大切にしていきたいと思います。
二十年も前に
なりますが、私は若い時に日本女子大学の教員を5年間だけいたしました。そこで非常によい勉強をしました。東京には女子大が沢山ありましたが、歴史の浅い
女子大学ほど、服装などが華美に流れているように見受けられました。日本女子大では、古くからの先生が多く、華美に流れた学生を見ると「田舎ものだね」と
言っていたものです。日本女子大の教育方針では、大学のキャンパス内では、濃い化粧をしてはいけないのです。イヤリングやネックレスや華美な装身が目につ
く所は、学びの場ではないという考え方でしたね。私は学生生活委員長をして、色々な大学の同じ立場の先生方と交流の場を持つことが多かったのですが、やは
り華美に流れている女子大は問題が多かったような気がしました。日本女子大は問題の起こらない大学でした。それから二十年以上経って本学に来て、同じよう
な思いをしています。華美な服装の学生もいるにはいますが、本学独特のよい雰囲気と厳しい目がありますので、4月に入学して秋頃になると、もう変わって来
ます。学生諸君は若いのだから、ファッションに関心を持ちお洒落をするのもよいですが、過度になってはいけない。本当の上品さというものは、目立たないよ
うでいて、よく見るとキラッと光るものがあることだと思います。ブランドものを身に着け厚い化粧をすることだけがお酒落ではないと思います。
【北村】
京都大学で教鞭を取られていた鯵坂先生は、講義の時、資料を風呂敷に
包んで持って行かれた。その雰囲気がとてもよかったし、キラッと光るものがありました。学生から尊敬されていましたね。
【学長】
鯵坂先生もそうでしたし、昔の本当の学者は、その人の存在そのものにキ
ラッと光るもの、溢れるものがありましたね。
【北村】
今日の後援会総会でも、保護者の方から大学は、就職の為の教育ではいけないとのご意見がありましたが、4年間学業に励まれ、たまたま企業から見れば、ノー
トルダムの学生さんを、うちの会社に来てほしいと望まれ、結果として就職にっながる。そういうことだと思いますが。
【学長】
そうですね。世の中から評価されることは大切なことですが、4年間かけ
て就職のためだけの勉強など出来るはずはありません。本学は40年の歴史があり、それだけの時間をかけた教育の在り方があります。英文学を学んだから就職
に役立つとも一概に言えない。新しく出来た「生涯発達心理学科」でもそうです。カウンセリングをやるとしても、実験、観察、検査等の基礎訓練をします。そ
れらが、人間を理解するための、深い、多面的な眼を養なっていくわけです。そうした勉強が結果として、世の中に評価されることになるのですね。
【仲田】
確か1999年には大学名に『京都』の冠をお着けになり、「京都ノー
トルダム女子大学」とし、2000年には4学科体制(英語英文学科、人間文化学科、生活福祉文化学科、生涯発達心理学科)をスタートされました。
2001年の今年は、創立40周年と大変な年ですが、どのような記念事業を計画されているのでしょうか。また学校、特に私立学校の発展を推し進めるには、
家庭が車の片一方の車輪であると思いますので、後援会としても何かお手伝いをしなければならないでしょうか。
【学長】
40周年記念事業としては、いろいろ企画されていますが、一番大きなも
のは「40周年記念館」の建設でしょうね。今、建設場所と規模について最終の詰めを行っていますが、本年秋頃には貝体的に計画がまとまり、来春には完工で
きるだろうと考えています。もう一つ大きいのが、「国際シンポジウム」の開催で、本年12月14日(金)に予定されていますが、国連大学学長(国連次
長)Hans van Ginkel 先生、元韓国文部省次官チョー・オンソク先生、メリーランドノートルダム大学 Sr. Miriam Jansen
先生をお呼びして、「21世紀における教育と地球的諸課題」(Education for Global lssues in the 21st
Century)について語り合っていただくことになっています。これから40周年関係のさまざまな行事や催しについて、学生諸君にお知らせして行きま
す。どうか後援会の方々も積極的に御参加、御協力いただければと思います。
そうそう、40周年記念募金の件もどうかよろしくお願いします。
【北村】
今の世の中では、英語とコンピューターが必須ですね。当然、本学にも
それがあるわけですね。
【学長】
必修です。英語、コ
ンピューターは大事な道具ですから、これは身につけなければいけません。
しかし同時に道具を使いこなすための人間性が育たなければなりません
ね。また、道具を使いこなすだけでなく、もう少し深い専門性も欲しいですね。
【北村】
スポーツ関係では、どういったクラブがあるのですか?
【学長】
テニス、ラクロス、バスケット、チアリーダー部などたくさんありますね。その他スポーツ以外では、茶道部、マンドリンクラブ、合唱団などの文化クラブが盛
んです。
【玉置】
授業中の私語が問題になっています
が、この頃は、携帯でメールを交換するのが流行っているそうですね。
【学長】
私も授業を持っておりますが、授業中のメール交換は禁止、使ったら取り上げると言っております。
ペットボトルの持ち込みも駄目と言ってありま
す。(笑)本学では注意すれば率直に理解します。世の中に出てもルールを守らなければ勤まりませんからね。ただ、あまり厳しく言って萎縮するのも困ります
が。
【北村】
最近、関東で、電車内で、詰めて欲しい
と言っただけで、傷害致死事件になったことが報道されましたが、ノートルダム小学校の生徒は非常に行儀が良いですね。バスを降りる時も「ありがとう御座い
ました」と挨拶していますし、席も譲っていますし、むしろ、無料パスのお年寄りの方が礼儀をわきまえない場合がありますね。
【学長】
ノートルダム小学校の生徒は、色々なところで、高い評価を受けていま
す。小学校の教職員が一丸となって、よい教育をされていますし、教育にブライドを持っておられます。
【北村】
中学、高校では、廊下を走ってはいけません、挨拶をしましょうなど基本
的な注意、躾をされていますが、大学では、そこまではされないでしょう。
【学長】
いや、注意はしています。大声を出さないよう、気がついた先生が注意します。それでずいぶんよくなって来ています。
本学では図書館が自慢です。
私も時間が空くとよく図書館に行きますが、いつも必ず何人かの学生が本を読み勉強しています。これはやはり本学の伝統ですね。着実に勉強している学生が
育っているのは嬉しいことです。日本には現在670もの大学があります。
私も他大学にも行くことが多いですが、図書館がガラガラといった大学が
ふえています。
【仲田】
大学時代は勉強を期待してい
ないから、出会いを大切にして、同級生の友人を如何にして多く作るかを心がけるよう本人に言ってあります。
それには、三つの情があると思いま
す。愛情、情熱、友情の三つ。愛情を注いだ娘に教職員の皆様から情熱を持って接して頂きますと、学生達は友情の輸を広げて行くのではないでしょうか。
【玉置】
若い人の喫煙率の増加には憂慮すべきものがありますが、大学ではどう
指導されているのですか?
【学長】
二年前まではキャ
ンパス内禁煙にしておりましたが、今は中庭の1箇所にのみ限定して学生喫煙コーナーを設けています。最近の統計では女性の喫煙率は増加しており、中でも京
都はトップレベルにありますが、本学で喫煙する学生はほんのわずかです。教職員の喫煙も少ないですし、この学長室にも灰皿はありません。(笑)教職員のた
めには別に喫煙室を設けています。
本学には古い伝統があり、独特の良さが生きています。教育では、駄日なことは駄目と言っています。
1,400人の学生がおりますので、正規には、色々な間題は、学生委員会、学生部で対応しますが、別に学生相談室を置き、専門の教員を配置し、また、女性
間題担当のベテランの教員(参与)を置き、対応しております。古きよさものは古風と言われようと大事にしていきたいと思っています。
【北村】
京都の気風とノートルダムの気風は合いますか?京都出身の学生さんが
多いのですか?
【学長】
志願者べ一スで見ると、京都
出身者が40%弱、他府県が60%です。必ずしも京都の縮図にはなっていないのですが、時々寄宿舎(約80人の学生がいますが)の学生のうち、遠方の学生
で京都の気風に合わないと言って泣く学生もいます。京都は独特の文化があり、人付き合いの仕方も異なりますからね。しかし、半年、一年と経過するにつれ
て、京都の良さが解って慣れて来ます。私は、京都のよさもしんどさも味わってもらえばよいと思っています。
【玉置】
就職も京都が多いのですか?
【学長】
いや、大阪も多いですね。他府県の出身者も多いので、必ずしもこちらで
就職するとも限りません。故郷に帰って就職する学生もいますので。ただ、一度就職してから結婚という場合が多く、家事手伝いというのは少なくなりました
ね。
【仲田】
就職活動の件ですが、はじめから家事手
伝いというのは殆ど無に等しいですね。女性の社会進出は、今や「男女雇用機会均等法」の法律まで出来ていますが、「男女共学」の大学と違い、スタートが遅
いと思います。
学生の就職は、大全業では既に3月には総合職が決まっていて、一般職はこれから採用試験の段階ですね。就職については、大学とし
てどのような努カをなされていますか。
【学長】
日常
的には、学生部長や就職課長が、各企業の方々とお会いする機会を積極的に持ち、お願いや、意見交換を行っています。学生に対しては就職活動のやり方や、企
業訪間の際のマナー等々について、3回生になってから特に力を入れて指導しています。また各学科の先生方が、自分のゼミの学生の就職について、側面からい
ろいろ助力しております。
それでは、そろそろ時間も参りましたので、この辺で、終わりたいと思います。本日は本当にどうもありがとうございまし
た。今後とも、ご援助、ご協力、よろしくお願い致します。