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『学科だより 2005年夏号』

学科ニュース

・本学科の留学生の曹ミリさんが、京都府名誉友好大使に!

本学科の留学生の曹ミリ(ちょう みり)さんが、 平成17年度の『京都府名誉友好大使』に任命されました。 京都府名誉友好大使とは、京都府内の大学で勉学する留学生の中から、 京都府と世界各地域との「かけ橋」としての役割を果たそうという意欲のある者に 任命されるものです。

曹さんは、本学科で日韓文化比較を専門としており、 本学のInternational Student Clubの会長も務めています。 本大学からの推薦の後、京都府の選考委員会で論文および面接試験が実施され、 最終的には山田啓二知事が決定し、 平成17年6月17日(金)の京都府開庁記念式典で正式に任命されました。

学科だより(2005年夏号)

2005年度「人間文化学概論」の共通テーマは「アラビアン・ナイト〜異文化 との出会い〜」

学生の「文化の学び」の第一歩は「人間文化学概論」で踏み出されます。 この科目は人間文化学科1回生必修で、毎年異なるテーマが設けられ、 それをめぐって専任教員がさまざまに論じていきます。 今年度の共通テーマは「アラビアンナイト」。 このテーマをめぐって専任教員12名が、 2コマずつをリレー式に講義を担当していきます。

前期の「人間文化学概論I」の主な講義は次の通りでした。

世界には多種多様な文化が存在します。 それらの多様な文化の本質を知るためには、多方面からのアプローチが 大切です。 人間文化学科の学生は、専任教員のリレー式講義を受けることで、 文化の多様性について、またその相互交流の歴史と現状について、 さまざまな分野から理解を深めることが可能になるのです。

また、後期の「人間文化学概論II」の主な講義は次の通りです。


2005年度「人間文化概論」の授業報告

以下に、すでに授業が終った先生からの報告を紹介しています。


第1、2回 「開けゴマ!」 鷲見朗子

「開けゴマ!」とは『アラビアン・ナイト』に含まれているとされている 「アリ・ババと四十人の盗賊の物語」に出てくる呪文です。 アリ・ババがこの呪文によって洞窟の扉を開き、 四十人の盗賊団の隠した財宝を手に入れます。 アリ・ババが扉を開いたように、 アラビアン・ナイトの世界へ入ってみようということで、 このタイトルを人間文化学概論のスタートとなる私の担当授業日につけました。

アラビアン・ナイトの起源は6世紀にペルシャで成立した説話集 「ハザール・アフサーナ(千物語)」にあるといわれ、 その後アラブ世界に伝わりました。 18世紀初に仏語に訳されて以来、多くの言語に翻訳され、 現在では世界文学の一つに加えられています。 西アジアの民によって育まれた数百話からなるこの大説話集は、 民族の夢と現実、悲しみや喜び、世界観や人生観、 信仰や風俗などさまざまな過去の真実を伝えています。

このように地理的・歴史的・主題的に広範囲にわたるアラビアン・ナイトの世界へ、 人間文化学科の専任教員が各自の専門領域に合わせて、 新入生をいざなうのがこの科目です。学生はこの科目を通じて、 本学科にどんな先生がいて、どういう研究をしているのかも知ることができます。 この科目が1年生のみなさんのよきスタートになることを願っています。 (2005.6.23報告、鷲見朗子)


第5、6回 「アラビアンナイトに関する情報の入手と活用、 Web情報の信頼性」  吉田智子

吉田の授業は、授業の最終レポートとして「アラビアンナイトに関する、 信頼性の高い情報を盛り込んだ説明的文書」を提出してもらうことを目標に 行ないました。まず最初に、論文やレポートなどの説明的文書が、 文学的文書と大きく異なる点は、「読み手に伝える内容が『事実』および 『事実に裏付けられた意見』に限られていて、心情的要素を含まないこと」 であることを説明しました。その後、情報の入手、選択、評価、利用の具体例を、 実際の論文を例にとって説明すると同時に、情報リテラシーの定義も学びました。

また、気軽に利用しがちなWebページの情報というものが、 実は信頼性が高いとは言えない理由を実感してもらうために、次の実習 (検索は宿題とした)を行ないました。この実習では、 アラビアンナイトに関する7つの設問を書いた「情報リテラシー入門」 に、「設問」と「答え」を書く欄以外に、 「情報源となったWebページの場所あるいは文献など」 「この答えが正しいと確信した理由」についても書く欄を設けて、 自分がWebページなどから得た情報を正しいと確信するためには、 信頼できる文献や専門家の意見などを活用することの大切さを学びました。 (2005.7.20報告、吉田智子)


第7回 「千夜一夜?百物語?三題噺?−”名数”の文化史」岡村敬二

岡村の初日は「千一」という数にこだわってみました。このように物や事柄に数を添える学びや命名の仕方を「名数」といいますが、それは数を添えて事物を覚え易くしたりまた褒め称えたりする一つの方法だったのでしょう。この「千一夜」からは、「千一もの夜」という多さへの驚きのニュアンスが感じ取れます。授業ではいくつか思いつく名数を学生諸君から挙げてもらいましたが、中国からの留学生からも「泰山鳴動…」の泰山を含む「五岳」など中国の事例があがったりして盛り上がりました。ほかに「三猿」「京都五山」「十干」「十二支」「東海道五十三次」「百人一首」「百八つの煩悩」…。

ところでこうした物学びのための名数とは少し感じがちがうのですが「千一の夜」とはどういったことを表明しているのでしょう。千一といいながらも当初の写本には二百数十の物語が記されていたとされ、それが千一にまとめあげられた物語成立のプロセスも興味を惹かれるところですし、時代を経て語られつつ伝承伝達されてきたという物語継承の過程も興味深いところです。そしてまたいっそう関心を向けたいのは、この「過ごされた千の夜と迎えられた千の朝」という時空と、その千一夜のあとに巡り来たった結末や出来事というのが、日本の「百物語」など民間の怪談会にも通じているのではないかと感じられる点です。百物語とは、一座が灯りを百ともして怪談話を一つずつ話し、話を済ませるごとに灯が消されて、百の灯りが全て消えた丑三つどき(深夜2時ごろ)怪異が現れるというものですが、その完結と現出の仕方ともどこか構造に共通点があるようにも思うのです。

事物を覚える学びの名数とともに、こうした千夜一夜物語・百物語・夢十夜・三題噺といった、朝と夜、過去と現在・未来、反復と自由往還、夢の往き来などなど…、これら名数にまつわる物語のしくみをもう少し考えてもおもしろいかなという気分でいます。 (2005.7.11報告、岡村敬二)


第8夜 「古書店で『アラビアン・ナイト』をさがしてみたら…」岡村敬二

岡村の2回目では、まず出版社・本屋さん・古本屋さんについてその業態の相違を説明し、そのうえで我が国に訳出されたアラビアンナイトの翻訳書をあげながら、現在古書として流通しているアラビアンナイト資料を検討してみる、というのが当初の目論見でした。しかしながらついつい京都の書店や古書店、寺町のガイドまでしてしまい、すこし時間が窮屈になってしまいました。それでも気を取り直して、インターネットの古書目録から簡単にリスト化して作成したものを眺めながら、昭和29年刊行の川端康成著村上松次郎等絵の『アラビアン・ナイト 1〜3』がカバー欠で8,400円だったり、昭和26年初版の手塚治虫『珍アラビアンナイト』が94,500円もする一方で、文庫化された手塚治虫漫画全集版『珍アラビアンナイト』が350円だったりという実情から、書店・古書店・新古書店にとっての書物の価値や、初出や初版ということ、さらには複製翻刻といった出版の態様から〈読み〉という行為の位相の異なりなどに言及したりしました。 (2005.7.11報告、岡村敬二)


(2005年夏号おわり。編集担当者:よ)

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