研究代表者 岡村 敬二
研究課題名 日本支配下中国・「満洲」における出版文化の諸相
種類 特定領域研究
研究期間 2001〜2004年
研究概要(2001年度) 「満洲」「満洲国」における出版事象を、その地域の出版文化政策を前提とし、資料の刊行から集積、保存・利用および戦後中国側接収以降の現在的所蔵状況までの総過程として位置付け、戦前期日本支配下時期の中国での出版文化を、明暗ともに明らかにすることをその目標とし、以下の成果をあげた。
(1)これまで取り組まれることのなかった「満洲」「満洲国」時代の出版法制や出版流通体制について、当時の新聞(マイクロ版)や基本諸年鑑などを精査することによりその概要を明かにした。
(2)東三省訪書旅行により、日本支配下「満洲」において出版、所蔵されてきた日本語資料が、現在中国の大学図書館や省市図書館にて、どのように所蔵されその検索ツールズや目録、コンピュータ検索などいかなる実態にあるかを現地調査し、東三省現存日本語資料を「共有資源」として利用するための基礎作業を行った。
(3)外交史料館保存起案文書や『満洲日日新聞』の調査により、「満洲国」での文化政策および文化活動を解明する作業をおこなった。
(4)当時の東洋学研究者たちが深く関与した「日満文化協会」「満日文化協会」の創設から解体までの全活動を、主として出版事業の側面から明らかにできた。
(5)満鉄図書館・満洲国各部署資料室・国策企業資料室など「偽満時期」文化諸団体や資料集積機関の概要を解明し、「遺された蔵書」の行方を現地調査して、戦前期各蔵書目録の有無なども含めて一覧化し、それら資料群の敗戦から現在にいたるまでの所蔵変遷の概要を明かにすることができた。
以上のことにより、これまで空白領域であった「満洲」時期の出版政策および出版活動研究への足がかりを作ることができたと考える。また今回、現地中国の「遺された蔵書」の所在調査など書誌学的な研究により、今後の東アジア出版文化の各領域の研究にあたっても資料調査などの面で大いに寄与できるものと考えている。
研究概要(2002年度) 本年度は、満洲および満洲国の図書館・協会・企業資料室など資料集積機関の実態解明およびその所蔵資料について研究・調査を展開し、所蔵機関一覧や協会の設立事情、さらにそれら機関の刊行物などについて、ある程度成果をあげることができたと考える。
これらの書誌学的作業は、これまで空白状態であったこの時期の出版事象の研究への足がかりともなり、これまでまったく手付かずとなっていた「外地出版」日本語資料のいわば「外地版日本全国書誌」編成についても端緒をひらくことができたと思っている。そしてそれは、「東アジアの出版文化」研究ばかりでなく、歴史学・文学・地理学など隣接研究領域の調査・研究面においても、書誌的・資料的な面から大きく寄与できるものと確信している。
 
研究概要(2003年度) 本年度は、満洲国資料集積機関についてさらに研究を持続するとともに、戦後中国での旧日文資料集積変遷年表の作成などにとりくんだ。これら書誌学的作業は、今後の外地における各諸相の出版事象についての基礎的データとなると思われ、日本に所蔵がまれである「外地での出版物」の概要もあきらかになるのではないかと考える。
具体的な成果としては、「新京資料室聯合会の創設と活動」と題して、満洲国国都新京における、新京特別市図書館や満洲国各部局設置の資料室、国策会社資料室などの連合体である新京資料室聯合会の活動について、創設から集蔵書、連合目録や刊行物目録編成・刊行経緯について論述した。

 
研究概要(2004年度) 本助成を得て申請者は、これまでほとんど空白の状態にあった、日本支配下の「満洲」「満洲国」の出版実態について、出版法制や出版政策、該当時期の出版事情、さらにそれら出版物の集積機関である図書館や研究機関の資料収集実態などの研究をいっそう推し進めることができた。それらは、現在ときあたかも中国で国家プロジェクトとして進められている「満鉄関係資料」の総合目録刊行事業と相呼応するかたちとなり、時宜を得た研究となった。つまり本研究では過去の実態調査面から、中国では現在の資料所蔵状況からの研究ということで、それぞれの研究・事業が1945年の終戦時期で結合することになったわけである。
本年の実績は以下の通りである。
1 『「満洲国」資料集積機関概観』(不二出版)の刊行。
収載の記事としては、「満洲国」の資料集積機関である各種図書館および官庁・国策会社資料室の活動実態をその集合体である「奉天省図書館聯合研究会」および「新京資料室聯合会」について詳細に論じた論文、また各資料集積機関の蔵書目録を網羅的に一覧化した目録などである。
2、「「満洲国」出版法令および主要出版団体」(『ナオ・デ・ラ・チーナ8号』)
満洲および満洲国の出版を統制していた各種出版法令を網羅的に調査し、その主要な法令について抄出した。
3 「満洲・満洲国出版史年表(稿)」科研成果報告として提出
満洲および満洲国時期の出版法制および出版各団体、つまり満洲図書・満洲書籍配給・満洲出版協会など関係団体や統制機関などについて年表化し歴史的経緯を概観した。
こうした書誌学的作業は、今後の各領域における満洲および満洲国の研究に対して基層となるデータを提供でき、関連の研究について大きく資すことができるものと考えている。