研究代表者 竹原 広実
研究課題名 高齢者の日常生活における身体機能維持活動としての台所作業と作業空間に関する研究
種類 基盤(C)
研究期間 2002〜2004年
研究概要
(2004年度)
家事作業の中でも最も日常生活活動量に影響を及ぼす台所作業について、台所作業時の動作や身体負荷のかかり方などを調査することにより高齢者の特徴把握を試みた。その際に高齢者の特徴を明確にするために中年者と若年者についても同様に調査を行った。対象者は三世代で同居している高齢者、中年者、若年者の7名である。各自宅の台所で通常の台所作業を行ってもらい、その間の心拍数、足底圧力などを測定し、作業の様子をビデオを用いて撮影記録した。
(1)作業前に対する作業後の心拍上昇率について、高齢者は半数以上が30-60%と高い上昇率を示し中年者は35%までに留まっており、若年者はほとんど上昇していない。また血圧の上昇についても同様の結果が得られ、高齢者は台所作業に長く携わることそのものが身体に負担を与えているといえる。
(2)高齢者は作業中に移動する距離は短く動きも遅い。また歩行は少なく重心移動を中心として作業の仕方が窺えた。
(3)重心移動回数が多くなるにつれて心拍が上昇し、下部収納からの物の取り出しなど瞬間的動作時に大きく心拍が上昇する傾向がみられた。
(4)ビデオ映像より作業時の姿勢を8種に分類した。高齢者にみられず中年者に多くみられた姿勢は膝屈伸(しゃがみこみ)姿勢であり、高齢者に特徴的にみられた姿勢は膝を伸ばした深い前屈み姿勢、伸長姿勢であった。またそれぞれの姿勢をとる際に自立して姿勢を保持する「支えなし姿勢」のではなく、何かに掴まって姿勢を保持する「支えあり姿勢」様子が多くみられた。
(5)高齢者と中年者ともにみられた同じ姿勢時の足底圧分布を検討したところ、高齢者は重心移動軌跡が前後左右と大きく不安定な状態である。一方中年者では重心の動揺は殆どみられず安定している。
(6)足底圧分布より、同じ姿勢であっても「支えあり」は「支えなし」と比較して重心動揺軌跡が小さくかなり安定した状態になっており、しっかりと支えに体重を預けている様子が窺える。
研究成果報告
(2004年度)
高齢者が身体機能をできるだけ長く保持し続けて、自立して安全かつ快適な生活を行うのに必要な生活環境条件を明らかにするために、日常生活活動量調査と、台所作業調査の研究を行った。
(1)日常生活活動量調査
極めて日常的な高齢者の生活行動における身体機能特性を把握するために高齢者がどのような日常生活を送り、どういった生活行動にどの程度のエネルギーを要しているのかを明らかにすることを目的として身体活動量の実態測定調査を行った。結果、次の事が明らかとなった。@高齢者は午前から昼過ぎまでによく活動し、活動内容は休憩と家事に多くの時間を費やしている。A総活動量の大小は加齢による影響が大きく、後期高齢者になると顕著に減少傾向がみられる。また家族の中での役割も活動量の増減に寄与し、家事を担当することは特に後期高齢者の総活動量を高めるのに効果がある。B外出行動の中でも徒歩は短時間で活動量を高めるのに大きく寄与する。
(2)台所作業調査
総活動量に最も影響が大きい台所作業を取り上げて、台所作業時における高齢者の身体機能特性や作業の仕方について把握するために実態調査を行った。結果、次のことが明らかとなった。@高齢者は中年者や若年者に比べて台所作業前後で血圧と心拍の上昇率は高く台所作業そのものの身体負荷は大きい。A作業姿勢は心拍数の変動にも影響を及ぼし、高齢者に多くみられた深い前屈み姿勢や伸長姿勢は心拍数を上昇させる。B足底圧分布より高齢者は下肢を使わず上肢に頼る作業の仕方をしている。C高齢者に多くみられた姿勢は重心動揺が大きく不安定である。しかし同じ姿勢であっても支えをもっての姿勢では重心動揺は小さくなり安定する。