教育・研究活動

ことばの研究会



 
   平成26年3月7日(金) 15:00〜16:10
   「社会認知としてのコミュニケーション能力研究」
    発表者:本学人間文化学部英語英文学科准教授 小山 哲春先生

 

 平成25年度第3回「ことばの研究会」が平成26年3月7日(金)、本学マリア館ガイスラーホールにおいて開催され、人間文化学部英語英文学科 小山哲春准教授より「社会認知としてのコミュニケーション能力研究」のテーマで研究発表が行われました。
 研究発表では、近年の研究により、コミュニケーション能力には従来言われてきたような記号および記号体系の理解だけではなく、人間の持つ根源的な社会的認知機構が深く関わることが明らかになりつつあることが、子どもの指さしに代表される初期コミュニケーションの発達、ミラーニューロン研究、ToMM(こころの理論)などに言及しつつ示されました。
 発表後は、言語使用における認知フレームの共有、認知フレームの個人差や文化間の差異と共通性、言語理解と言語習得の前段階で獲得するコミュニケーション能力との関係などについて、質問者と発表者の間で質疑応答および意見交換が行われました。



 
   平成26年1月22日(水) 17:00〜18:10
   「統語部門と意味部門とのインターフェースに関わる諸問題」
    発表者:本学人間文化学部英語英文学科講師 杉村 美奈先生

 

 平成25年度第2回「ことばの研究会」が平成26年1月22日(水)、本学マリア館ガイスラーホールにおいて開催され、人間文化学部英語英文学科 杉村 美奈講師より「統語部門と意味部門とのインターフェースに関わる諸問題」のテーマで研究発表が行われました。
 研究発表では、私達が言語について無意識に持っている知識が、例を挙げて示されました。また、意味/構造の曖昧性について、例文を挙げて紹介され、参加者は品詞と動詞の相互作用によって文の意味が変化するかどうか、意味を持つ文として許容できるかどうかを考えました。最後に、今後の研究の展望について述べられました。
 発表後は参加者から、文の意味が理解できるかを判断する際の基準や条件についての質問が出され、発表者との意見交換が行われました。また、条文の解釈は一通りしか許されないとの、法律の研究者の立場からの意見も出されました。参加者の専門分野は様々でしたが、それぞれが無意識に持っている言語知識について改めて考える機会となりました。



 
   平成25年10月11日(金) 17:00〜18:10
   「境界性人格障害の実存様態についての解釈学的現象学による研究―作家、太宰治を症例として―」
    発表者:本学心理学部准教授 田中誉樹先生

 

 平成25年度第1回「ことばの研究会」が平成25年10月11日(金)、本学マリア館ガイスラーホールにおいて開催され、心理学部 田中准教授より「境界性人格障害の実存様態についての解釈学的現象学による研究 ―作家、太宰治を症例として―」のテーマで研究発表が行われました。
 研究発表では、まず本研究は、境界性人格障害 Borderline Personality Disorder(以下BPD)を「病む」ということが、当事者本人にとって、どのように経験されどのような個人的意味を持つ経験であるかを明らかにすることを、目的としていることが述べられました。その上で、解釈学的現象学Interpretative Phenomenological Analysis(以下IPA)を用いた一事例研究によって、量的研究では見えにくい当事者固有の意味世界を理解できること、これにより心理臨床家がBPD患者の実存的様態(存在の仕方)を把握し理解できる、という意義があることが示されました。

 次に、IPAを用いた先行研究が紹介されました。先行研究のうち、カルロ・ぺルフェッティらによる複合骨折し腕神経を損傷した患者のリハビリテーションプロセスに関する事例研究について特に詳しく説明されました。この事例によると、治療者がIPA的方法によって患者の症状の個人的な意識体験を理解することが、リハビリテーションにおいて不可欠であり、治療効果を上げることに貢献したとのことでした。
 続いて、田中先生が、今日の基準ではBPDと診断される可能性が高い太宰治を、IPAを用いて分析した内容が紹介されました。分析方法として、昭和10年〜11年に太宰が送った書簡33通から頻出する単語や表現、独特の言い回しの「言葉」をIPAの原理である@判断中止(エポケー=特定の理論的前提や社会通念による先入見を脇に置いて対象を、研究者の意識に現れるがまま記述していくこと)、A本質直感(テクストを繰り返し読むうちに、テクストが伝えようとしていることの本質的意味が研究者の意識によって直感的にとらえられること)、B解釈学的循環(@Aによって得られた本質的意味をテクスト全体の文脈に照らして検証し、逆に本質的意味から、テクスト全体を読み直すこと)に従って抽出、コード化しカテゴリーに分類する手法を取ったことが紹介されました。
 
 最後に、分析の結果見えてきた太宰にとっての「病むこと」の本質的意味についての考察が述べられました。今回の研究では、太宰の「病むこと」の本質は、太宰の人生において欠けている「母性体験」と、「自己の存在価値の承認」への渇望であり、「病むこと(BPD的な諸症状)」は、それらを掴み取り、取り戻し、生きようとする切実な試みとしての意味を持っていたこと、そして「病みつつ生きる」ために太宰にできる唯一の行為は、やはり上記の渇望と関連して生じてきた「書くこと」であったことがわかったと述べられました。太宰にとって「書くこと」は、「読むこと」「語ること」と同様、それと引き換えに「母性愛」や「自己の存在への承認」を得ることのできる重要な実存的を持つ行為であったことを強調されました。
 
 発表後の質疑応答では、参加者から太宰治を分析対象とした理由や、すでに亡くなった作家である太宰治を分析の対象とすることについての質問がなされました。これらの質問に対して、田中先生からは、太宰については手紙の他、傍証資料など、分析に必要な生のテクストが豊富であること、既に亡くなっている人の場合でも、本人が書いたテクストそのものと、研究者が@ABのプロセスを通して、比喩的な意味で「対話」することによって、ある程度の検証が可能であるとの回答がありました。ただし、指摘された点については、今後も検討していきたいとのことでした。今回は大学院生の参加者が多く、教員の研究成果が大学院生にも共有される有益な機会となりました。

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