京都ノートルダム女子大学 大学院人間文化専攻

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論文梗概
 

金英美
在日朝鮮人文学―在日三世作家金真須美作品と柳美里作品の父娘関係と在日観の関連性と比較―

 
在日朝鮮人文学は、在日作家の帰属意識(=アイデンティティー)に大きく影響する。一世から、二世、三世へと、世代が進むにつれ、その意識は非常に曖昧化してきている。 まずは、その変化の中味を、一世・二世作家といった在日文学の歴史を世代ごとに述べる。

さらに、ふたりの三世女性作家、金(キム)真(マ)須(ス)美(ミ)著『贋ダイヤを弔う』(大阪文芸協会同人雑誌『鐘』

第七号一九九五年一月発行掲載)、『メソッド』(河出書房新社一九九六年発行)と、柳(ユウ)美(ミ)里(リ)著『フルハウス』(文藝春秋一九九六年発行)、『家族シネマ』(講談社一九九七年発行)、『ファミリー・シークレット』(講談社二〇一〇年発行)の作品に描かれた父娘関係・家族像をとりあげ、在日朝鮮人のアイデンティティーの変貌との関連性を考察したい。

金真須美の『メソッド』『贋ダイヤを弔う』に共通するのは娘の父親への反抗、そこから発展する同族結婚への反対意識であり、自身の体に流れる曖昧な血に対する葛藤である。娘の親に対する反抗は自身の在日アイデンティティーへの反抗と密接に繋がっている。

一方の柳美里の『フルハウス』『家族シネマ』における娘の父へ向けられるものは無視・無関心といったネグレクトにも似た態度で、そこに感情は一切ない。だが、柳美里自身が己の家族をテーマに執筆を続ける姿勢からは、彼女が家族との関わりを避けつつも、関わらずにはいられない現実を示している。さらに言い換えれば、柳美里自身が、自らの在日アイデンティティーを作品から排除しつつも、民族意識からは逃れられない事実を露呈している。

つまり金真須美作品の親に対する憎悪が「情熱」ならば、柳美里作品の憎悪は「冷酷」なのである。いわば燃え盛る炎と凍える氷、動と静といった真逆のものが、同じ憎悪の異なる表現となっているのである。

たとえ時代が変わり、在日の存在を知らない日本人の世代が増え、これまでの価値観や意識が変わろうとも、自身が在日であることに変わりはない彼女たちは、自身の曖昧な在日アイデンティティーの壁を避けて通れない。

だが彼女たちはそこから逃避せず、これからの様々な課題へ、新たな道を切り開こうとしている。
 
 
 
 
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