京都ノートルダム女子大学 大学院人間文化専攻

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論文梗概
 

大竹真由
C.D.フリードリヒの芸術観―《テッチェン祭壇画》の展示を手がかりに―

 

本稿は、19世紀はじめに活躍したドイツ人画家、カスパー・ダーフィット・フリードリヒ(Caspar David Friedrich, 1774-1840)の芸術観を、自身のアトリエで一般公開した《テッチェン祭壇画》(1808年)を中心に考察するものである。このアトリエ展示は、ただ作品を見せるだけでなく、作品に合わせて展示空間を創り出すという、特殊なものであった。彼は「絵は創意工夫するものではなく、心で感じ取るものである」という考えを持ち、常に鑑賞者の眼差しに向き合い制作していた。このようなフリードリヒの芸術観を、「展示」に焦点を当て明らかにすることが本稿の目的である。

第T章では、《テッチェン祭壇画》が持つ特異性について明らかにする。続く第U章、第V章では、ドレスデン王立絵画館やドレスデン美術アカデミー展覧会における展示を取りあげ、先行研究や、アカデミーの展覧会カタログの考察を通して、スタンダードな展覧会が持つ展示の特徴を捉える。第W章では、再度アトリエ展示がもたらすメリットを考え、アトリエ展示や「透かし絵」作品での特異な展示が生み出された経緯を、フリードリヒ自身が語る芸術論や、スタンダードな展示への考えを通して明らかにする。一連の考察を通して、《テッチェン祭壇画》、《峡谷の風景》(1830-35年)や「音楽のアレゴリー」作品(1830年)での演出された展示が、フリードリヒの芸術観の現われであると結論付ける。

フリードリヒは、作品を壁一面に並べる展示を嫌い、それがいくら大作であっても敷き並べると魅力を失うと考えていたが、時にはアカデミー展覧会の持つ特徴を利用し、愛国的な作品を出品することもあった。《テッチェン祭壇画》のアトリエ展示の際は、わずかな光だけを取り込み、教会のような空間を創出することで、「祭壇画」というテーマを表現した。一連の「透かし絵」展示では、光を使うことで、時間の変化、つまり自然の動きを見せることに成功した。「音楽のアレゴリー」は、子どものような純粋な心を持つ、フリードリヒの芸術観が生み出した、新たな展示方法による作品表現であったと考えられるだろう。

画家自身による展示空間の創出や、作品展示にともなう総合演出は、当時は特異なものであった。しかし、純粋な感動を大切にし、それを作品の見せ方も含めて表現したフリードリヒの芸術観は、現在に通じるものがある。

 
 
 
 
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