京都ノートルダム女子大学 大学院人間文化専攻

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論文梗概
 

廣川 陽子 宮崎駿監督作品の本当らしさ 〜『となりのトトロ』を中心に〜

 

本論では、宮崎がどのような独創性を持って映画を作り上げているのか「本当らしさの表現」に観点を置き、『となりのトトロ』を中心に論じた。虚構のアニメーション映画をいかに観客に「本当らしい」と感じさせるかが宮崎の演出であるとし、骨組みとなる構造、物語を具体化するモチーフ、アニメーションの表現としての絵の3点について考察した。
第T章では、『となりのトトロ』の構造に着目した。従来の「行きて帰りし物語」とは異なり、別の世界に住む者同士が、互いの世界を行き来する構造を取り入れている。登場人物と異形のものの交流を中心にした構成は、ファンタジーでありながらも、観客に身近に感じられる「本当らしさ」に繋がるものである。
第U章では、物語に具体性を持たせるモチーフについて考察した。「引っ越し」や「過程」のように、モチーフそのものが「本当らしさ」の表現になっているものと、「飛翔」のように、ファンタジーでありながらも現実世界のイメージを取り入れて「本当らしさ」を感じさせるものがあると明らかにした。
第V章では、アニメーションとしての絵について考察した。ここでは、観客に既視感を抱かせる「本当らしさ」が見られた。観客の体験や記憶を呼び覚ます行動や、「そのままどこかにありそうだ」と思わせる風景を描くことが、「本当らしさ」の認識に繋がるのである。
最後に、第W章では、物語の構成を総合的に考察した。モチーフやシークエンスといった要素は、決して個々に存在するのではなく、物語全体を貫くように描かれていることを明らかにした。また、「トトロとの交流の話」と「家族の話」という、非日常と日常の物語を並行して描くことは、物語が現実の出来事であるかのように感じさせる「本当らしさ」に繋がる。
宮崎アニメが人気を博する理由は、作品を構成する3つの要素に、それぞれの「本当らしさ」の演出が統一性を持って表現されているからだ。アニメーションにしか出来ないファンタジーの表現を散りばめながらも、そこに我々の日常生活を彷彿とさせるような描写を織り交ぜて現実世界との結びつきを感じさせる宮崎アニメは、現実を見出す「本当らしさ」を抱かせる。それが結果的に、宮崎アニメが、老若男女の垣根を越えて受け入れられる要因となったのだろう。

 
 
 
 
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