京都ノートルダム女子大学 大学院人間文化専攻

京都ノートルダム女子大学  | 本学TOP | 人間文化専攻TOP |
大学院人間文化専攻 Cross-Culutural Studies 大学院人間文化専攻 Cross-Culutural Studies
   
 

教育のページ > 院生の活動報告 > 実習

 
 
天王寺美術館
 
松本朋子
人間文化研究科人間文化専攻
2007年度入学

 私は2007年6月29日から7月6日までの土日を除く6日間、天王寺公園内にある大阪市立美術館へ博物館実習に行かせていただきました。大阪市立美術館での実習内容は主に第53回全関西美術展(美術館他主催公募展)開催の準備作業、講義、美術品の取り扱いなどでした。
 初日はオリエンテーションと、美術館の学芸担当課長の篠雅廣さんの『美術館と行政』という講義でした。オリエンテーションではこれからの流れと、全関西美術展でのグループわけをしました。全関西美術展では、洋画・日本画・彫刻・書・工芸の5つの部門から成り立つもので、約60人の実習生(内男性は10人)が5つに分けられました。私は洋画部門の担当になりました。
  その後講義となり、美術館と地域社会との関わり方の話を聞きました。特にその講義の中で印象に残っている話は、阪神大震災の時における美術館のあり方でした。篠さんは当時西宮にある美術館の館長さんとして勤められていて、美術館自体は無事だったので、震災後も毎日出勤していたそうです。ある日、消防団の方が来られて、「この美術館を死体安置所として使わせていただけないか」と訪ねてこられたそうです。その時篠さんは「ここは美術品を保管しておく場所だから」という理由で断り、ただ駐車場を死体安置所としてお貸ししたそうです。窓から見える駐車場に死体が並べられるのを見ながら、「本当にこれでよかったのだろうか」という思いに駆られたそうです。

 最期の時すら雨ざらしにされてしまっている方々。確かに美術館は美術品を保管・所蔵しておく建物ではあるが、震災時にもこのままでよいのだろうかと思われたそうです。その後、その美術館は避難民の方々に、避難所として解放されたそうです。開放された後の美術館は、もう美術館としての機能はあまりなしていなかったそうです。けれども、震災後の神戸で来館者もいないのでこれでよかったのではないだろうかと思われたそうです。しかし、これは一部では非難されたことでもあったそうです。貴重な美術品を保管しておく美術館に、一般の人が住む。それは美術館の使命とは違う、と。それでも、地域の方々と密接な関係を持つことで美術館への理解深まり、これからの博物館・美術館の発展に繋がるというお話でした。

天王寺美術館
大阪市立天王寺美術館

 

 2日目から5日目は全関西美術展の作品の搬入・受付・美術品の審査・陳列をお手伝いさせていただきました。作品の搬入では、洋画部門の私は自分の体よりも大きいキャンバスを実際に運びました。作品は洋画部門だけで300点以上に上りました。絵を汚さないように、一人で運ぶ方法などを、美術品の運搬の業者の方から教わりました。美術品の審査は11名の洋画の先生方が担当され、その前に業者の方々が300点以上もの作品を1作品ずつ運び、挙手制の多数決で審査していくのを、横でどの作品が入選で落選かの管理を実習生がするというものでした。美術品の陳列では、業者の方の仕事であった天井からワイヤーを吊るすこともさせていただきました。その他は、洋画の先生の指示に従い、見栄えや、作品系統によって飾る位置を決め、キャンバスの裏に器具でつなぎ、ワイヤーと繋ぎ、上に引き上げて、来館者が見やすい位置にするということをさせていただきました。

 実際の展覧会の公開までの準備や一連の流れを身をもって経験することが出来たのは、本当に貴重でありがたいことでした。洋画の取り扱いは、一般の人の作品だったせいもあったかもしれませんが、落としたらいけないので素手で運ぶなど、実際の現場ならではの指示もありました。授業で習っていることばかりが正しいのではないことを知りました。また、業者の方に特別に倉庫にも連れて行っていただきました。そこには寄贈されたものなどが、段ボール箱に入れられたまま山積みになっていました。それは、温度の管理もされていなければ、環境がいいとは到底言えない倉庫です。時々、このような話を授業で聞いてはいましたが、実際に適当に保管されている美術品を見ると驚きを隠せませんでした。その他の、あまったチラシなどもすべて適当に積み上げられていて、ここまで管理できるほどのお金が回ってきていないことも、話に聞いた通りなのだと知りました。
   

 最終日は午前・午後とも講義でした。午前の講義は大阪市立美術館の歴史と、コレクションについての話を聞きました。大阪市立美術館は美術館という名前ですが、絵画の専門家がいないという、博物館に近い異質の美術館だと知りました。午後は工芸の取り扱いと、書の取り扱い方を実際の貴重な美術品を使い学びました。工芸の取り扱いは、私の班は850万もする中国の青磁器を取り扱いました。磁器や陶器は落としたら大変なので、床に腕をつき、素手で持ち、触ります。授業だったら間違いなく手袋をしなければいけないと習っていました。そのあたりの違いも実際に行っているのと、文字だけで習うのは違うのだと感じました。書の取り扱いでは、箱からの取り出し方、飾り方、しまい方をやりました。ただ、私以外の実習生は学校ですでに体験済みで、美術館側の方もやってきていると思われていましたので、私は周りの実習生のやり方を見ながらやるしかありませんでした。

 実際に経験してきていないことがこうまでも違うのだと感じました。学校から取り扱い方の冊子はいただいてはいましたが、読んだだけではやはりすぐに行動に移せないことが反省点でした。
 全体を通して、かなり実践的な実習をさせていただきました。聞いて学んだことと違うところが多く、実習に行かなければ気づけなかった取り扱い方もありました。これはおそらく、行く博物館や美術館によって違うのだとは思いますが、学校で習うことと違うことは疑問に残りました。今後、実際に経験したことを踏まえて様々な美術館・博物館へ行った際に観覧することによって、理解が深まると考えました。

 
BACK TOP HOME