京都ノートルダム女子大学人間文化学科

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人間文化学科

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朱鳳 准教授

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朱鳳 准教授

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朱鳳 准教授 ―教員の研究活動紹介―

 
「ヨーロッパ人の中国語研究史シンポジウム」での研究発表報告
 

 今回大学の助成金を頂いて、ローマ大学東方学院で開催された第3回世界漢語教育史研究会「ヨーロッパ人の中国語研究史シンポジウム」(9月13日〜9月14日)に参加し、発表を行った。私の発表は19世紀初頭に中国で活動した宣教師ロバート・モリソンが手かげた中国語学習教材の内容を分析した上、モリソンの中国語観と教育観を考察するものであった。
 シンポジウムの二日間を通して、中国、イタリア、ロシア-、ドイツと香港から来た研究者との交流も深めることができた。今後の研究に役に立つ情報と人脈を得たことも本研究の成果の一つと考えられる。

 
「ヨーロッパ人の中国語研究史シンポジウム」の発表風景

「ヨーロッパ人の中国語研究史シンポジウム」の発表風景

 

研究発表「モリソンの中国語教育への貢献」の梗概:

 モリソンは聖書翻訳と華英字典の編集で著名であるが、中国語教育家としても多くの著書を残している。本発表はモリソンが残している4冊の中国語教科書を研究資料とし、彼の中国教育への貢献を考察したものである。

一、モリソンの中国語学習法
モリソンは次の4冊の中国語教科書を著していた。
1.A Grammar of the Chinese Language ≪通用?言之法≫(1815, Serampore)
2.Dialogues and Detached Sentences in the Chinese Language Designed as an initiatory work for the use of students of Chinese (1816, Macao)
3.A View of China for Philological Purposes Designed for the use of person who study the Chinese language (1817, Macao)
4.Chinese Miscellany (1825, London)
これらの教科書の中に、モリソンがヨーロッパ人に対して具体的な学習法を述べている。
1.まず簡単な口語から入り、古典の中国語も学習する必要がある。中国人の小説、故事と日常生活に古典の引用がかなり多いので、中国語をマスターするためにはある程度の古典知識が必要だ。
2.漢字を重視する。ヨーロッパ人にとって単に中国語の発音を覚えるのは不十分である。なぜならばローマ字と違って、漢字は表音ではなく表意文字からである。漢字を理解した上で初めて真に中国語を取得したと言える。
二、A Grammar of the Chinese Language ≪通用?言之法≫(1815, Serampare)の特徴
1.西洋文法理論を持って、中国語を分析する。
モリソンの前に、プレマール(Joseph de Premare, 1666-1736)の『中国語札記』(Notitia Linguae Sinicae, 1728)にすでに西洋文法理論が用いされているが、モリソンの書物がさらに詳細である。彼は中国語の単語をすべて西洋の9品詞に分類した上、名詞の格、性、数、動詞の時態、形容詞の比較級なども西洋理論を持って説明していた。
2.古典の用例も重視する。
この教科書は基本的に口語の用例を使用しているが、古典の用例も注意深く引用している。さらに両者の違いについても丁寧に説明している。
三、Dialogues and Detached Sentences in the Chinese Language Designed as an initiatory work for the use of students of Chinese (1816, Macao)の特徴
この教科書は東インド会社の職員のために編纂したものである。教科書に商業会話、中国役人との交渉、ニュース、小説など幅広い知識が収録されている。
1.商業会話
‘With a Servant’, ‘Respecting Cotton’, ‘With a Tea Merchant’, ‘With a Comprador’のような学習者が実感できる場面が設定されている。
2.日常会話の話題も豊富である。
中国人先生との会話(With a Teacher of Chinese)、中国の信仰宗教(Respecting the Religious of China)、中国役人への訪問拜?(On the Mode of Visiting in China)などの実用的な会話ばかりである。
3.ニュース
おそらく新聞報道から引いたニュースが二つ収録されている。(‘A Fire at Canton’と‘Burning of a ship’)
4.小説笑話
@Spring Ramble(《英云梦?》)
Aperson Ill(《?楼梦》第三十一回〈撕扇子作千金一笑 因麒麟伏白首雙星〉の一部
BPoor Woman inviting a person to Dinner(《西??》)
C Tale of a Covetous Mandarin Illustrated(《広笑府》巻七「有銭者生」)
四、A View of China for Philological Purposes Designed for the use of persons who study the Chinese language (1817, Macao)の特徴
これは中国の歴史を紹介する教科書である。各時代の皇帝と重大事件を記述したほか、清国の官職名、各地の地名、面積、経緯度と人口などの情報も詳細に書かれている。また歴史地理以外に、モリソンは中国の風俗や、宗教習慣、たとえば、「二十四節気」「中国の時間」「中国の新年」「儒釈道」「婚姻と葬礼」などの情報も収録した。
五、Chinese Miscellany (1825, London)の特徴
この書物はモリソンが休暇のためにイギリスへ帰国中に書かれたものである。主にヨーロッパ人に漢字の基本知識を紹介したものである。彼はこの書物の中に漢字の214部首を紹介した他、部首のもとであった373の象形記号(Symbols)もリストアップし、8種類に分類した。
1.SYMBOLS THAT REPRESENT NUMBERS
2.SYMBOLS THAT RELATE TO CELESTIAL OBEJECTS
3.SYMBOLS THAT RELATE TO THE EARTH
4.SYMBOLS CONCERNING HUMAN BEINGS
5.SYMBOLS THAT REFER TO ANIMALS
6.SYMBOLS THAT REFER TO PLANTS
7.SYMBOLS THAT REFER TO MANS’S WORKS
8.MISCELLANEOUS SYMBOLS
なぜ373個なのか定かではないが、おそらくモリソンは『六書』や『説文解字』などの書物から選定したものだと考えられる。彼は「象形記号は漢字構成のもっとも基本的なものであるが、今まで漢字の部首がしばしば言及されたが、部首の成り立ちについてまだ触れたことがない。この書物に収録された象形記号はおそらく初めてヨーロッパで出版されるだろう」と自慢げに言っていた。
六、まとめ
モリソン以前の中国語教科書はすでに中国古典とことわざに注目したが、モリソンのように中国の民間風俗や、漢字の字源に関する情報を正確かつ体系的に収録したものはない。これはモリソンの中国での経歴と関わりがあるのではないかと推測する。彼は中国で25年を滞在した中、宣教師、中英貿易通訳者、中国語教師、イギリス使節団の翻訳など多彩な顔を持つ人物であるからこそ、このような独自な中国語観と教育理念を持つことができたと考えられる。
 
 
   
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