京都ノートルダム女子大学人間文化学科

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人間文化学科

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朱鳳 准教授

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朱鳳 准教授

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岡村敬二 教授

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鷲見朗子准教授 「日本人のためのアラビア語教授法の開発―アラブ文化要素 の効果的活用―

≫ [ 萌芽研究 ] 平成19年より3ヵ年

 
日本人のためのアラビア語教授法の開発―アラブ文化要素の効果的活用―
 
1.研究内容

 日本のアラビア語教育は1925年に大阪外国語学校(現大阪外国語大学)で始まりました。近年、特に2001年9月11日に起こった同時多発テロ以降、人々のアラブ・イスラーム地域への関心が高まったこともあり、アラビア語教育の普及はめざましい勢いで伸びています。ある報告によると、日本のアラビア語教育機関数は、2001年には27であったのが、2005年には50と4年間にほぼ倍増しています。また、NHKによるアラビア語講座もラジオ講座が2002年、テレビ講座が2003年に始まったほか、放送大学でも2006年からテレビ科目(「初歩のアラビア語―アラブ・イスラーム文化への招待―」主任講師:鷲見朗子)が開講され、多くの受講者を集めています。この現象は、一般の日本人にとってアラビア語が「遠く離れた異国のことば」から「習ってみたい身近なことば」の1つに変貌しつつあることを示しているのではないでしょうか。同時に、以前は専門家養成に主眼をおいたアラビア語教育であったのが、現在は一般の人々をも視野にいれた実用的なアラビア語教育が求められるようになったことを意味します。
 このようにアラビア語教育の需要は拡大しているにもかかわらず、日本における外国語教育研究の理論と実践に基づいたアラビア語教育研究は、まだ緒についたばかりの段階といえます。また、従来の日本のアラビア語教育は文法重視型が主であるため、現在の外国語教授法で主流である伝達重視型の教育法をより発展させていくことが早急に求められています。他方、国際的には、外国語教育学としてのアラビア語教育研究は1970年代から盛んに行われるようになりました。現在は、世界的にも増加傾向にあるアラビア語学習者のニーズに応えるべくよりよい教授法を模索するなかで、さまざまな角度からの研究が活発になされています。近年行われているアラビア語教育研究には、次のようなものがあります。実態調査、カリキュラム(シラバス・デザインや到達目標を含む)、指導法、教材、テクノロジーの応用(Computer-Assisted Instructionを含む)、評価、アラビア語集中プログラム(イマージョンプログラムや夏期集中講座)などです。
 とりわけアラビア語教育に文化の要素を取り入れていくことの重要性が各所で指摘されています。外国語で意思疎通するためには、その言語の文法だけでなく、その言語世界の人々の生活様式、行動様式、ものの考え方なども理解していなければならないからです。
 本研究では、日本人向けのアラビア語教授法開発の推進をめざして、まず先行研究となりうる文化と言語教育に主眼をおいたアラビア語教育研究の現在の流れをおおまかに示し、主な研究枠組みと内容をそのコンテクストとともに分析をします。次に、文化要素に関連するアラビア語教育学のなかで問題とされてきた要素をいくつかとりあげ、それらの論考が日本のアラビア語教育の現状にいかに関わり、将来のアラビア語教育の向上にどのように役立つのかを考察します。この研究によって、日本のアラビア語教育がより活性化され、多くの学習者がアラビア語の勉学を楽しみ、アラブ世界により深い関心と理解を示してくれることを願っています。

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2.アラブの文化

 さてアラブの文化にはどのようなものがあるのでしょうか。上の研究とは直接関連はありませんが、ここでアラブ世界の芸術、メディア、生活の文化の一端に触れていただきたいと思います。放送大学のテレビ科目「初歩のアラビア語―アラブ・イスラーム文化への招待―」(2006年より放送)制作のために2005年に海外ロケを行いましたので、そのインタビュー時に撮影した写真とともにいくつかのアラブ文化を紹介します。なお紹介内容は、同科目の放送教材ならびに同科目の教科書として放送大学教育振興会から2006年に刊行された鷲見朗子編著「初歩のアラビア語―アラブ・イスラーム文化への招待―」を参考にしています。

 

(1)アラビア書道
 アラビア書道は高い美的価値を備えた芸術として世界で認められています。イスラームの聖典であるコーランをいかに美しく書くかという宗教的な動機からイスラーム世界において発展をとげてきました。ペンは葦や竹の先端をナイフ状に削ったもの、インクは墨汁などが使われます。
 写真の左側が国際的に有名な書家であるエジプト人のムスアド・フダイル氏です。右側にいる鷲見が手にしているのが、氏が特別に放送大学の科目のために書いてくださった作品で、科目のタイトルである「初歩のアラビア語―アラブ・イスラーム文化への招待―」がアラビア語でしたためられています。上段が「初歩のアラビア語」、下段が「アラブ・イスラーム文化への招待」で、両段ともアラビア語なので右から左へ読みます。

ムスアド・フダイル氏の作品
ムスアド・フダイル氏の作品
 

(2)アルジャジーラ放送局
 アラブのテレビ局として国際的に注目を集めているのがカタールの首都ドーハに本部をおく衛星テレビ局アルジャジーラ放送局です。1996年に開設されました。アルジャジーラはアラビア語で「島」「半島」を意味するジャジーラに定冠詞のアルがついて「その半島」つまり「アラビア半島」という意味です。カタールはアラビア半島で重要な位置を占める、という意味がこめられているそうです。
 アラブのメディアの多くが各国政府や出資者の影響下にあるなかで、アルジャジーラはカタール政府の政治的・財政的援助を受けつつも、比較的自立した報道姿勢を維持してきました。また、アルジャジーラはニュース価値があると判断すれば、いかなる事件も報道することから、欧米だけでなくアラブ諸国からも多くの抗議や非難を浴びてきました。けれども、他のアラブのメディアが扱おうとしなかった政治や宗教のタブーを積極的にとりあげるなど、アルジャジーラはアラブのメディアに大きな変革を与えたといわれています。

アルジャジーラ放送局の副調整室
アルジャジーラ放送局の副調整室
 
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(3)コーヒー占い
 アラブ地域でよく飲まれているコーヒーは、コーヒー豆の粉を直火で煮出し、小さなカップにそのまま注いだトルコ・コーヒーです。飲み終えた後、カップの底にどろどろとしたコーヒー粉が残ります。この沈殿物が広がるようにカップを振り動かしてから、いったん受け皿の上にカップを伏せ、戻します。こうしてコーヒーの粉がカップの内側に作り出した模様によって占いを行います。カップに残った模様の解釈として、たとえば、馬の形は愛人あるいは夫、ツバメやスズメに見える場合は吉兆のしるし、蛇は悪への誘惑、蛇の舌は他者からの中傷を表すなどとされています。また、しずくの形は涙、黒い塊りは悩みや心配を意味することもあるといいます。

エジプトのコーヒー占い師と
エジプトのコーヒー占い師と
 

(4)ヘンナ
 ヘンナはイスラーム世界やインドなどで親しまれている染料の一種、あるいはその原料を意味します。原料としてのヘンナは、北アフリカおよび西南アジア原産とされるミソハギ科の低木で、モクセイに似た香りを持つ白または黄色の花(直径7ミリほど)を咲かせます。古くから薬草として知られ、花や種子からは香油が作られてきました。このヘンナの葉を乾燥させ、粉末にしたものが黄色あるいは赤褐色の染料として利用されます。染料としてのヘンナは、髪やひげを染めるために男性も使用しますが、女性にとって、日常生活や人生の節目にあたる大切な行事、とくに結婚式になくてはならないものです。砂漠で生活する遊牧民の女性は、ヘンナ粉末に水分を加えペースト状にしたものを手のひらや爪、足の裏とかかとに塗って染めます。ヘンナの成分が乾燥による手足のひび割れを防ぎます。一方、花嫁にとってヘンナで手足を染めることは婚礼の日のためになくてはならない行為です。というのは、アラブの古い伝承から、ヘンナにはバラカ(聖なる祝福の力)が宿ると信じられているからです。また、ヘンナの赤い色は邪視を妨げる魔よけの効果があるとも考えられています。(邪視とはイスラーム以前からアラビア半島を含めて西アジア一帯に広範に行き渡っていた俗信で、幸福な人、富裕な人、幼児、美人などが妬みの対象になり、その難にかかりやすいとされます。)このように、ヘンナは単なる装飾と美容の機能をもつだけでなく、人間に聖なる力を与える植物として人々に愛され続けています。

ヘンナを施すスーダン人女性(カイロにて)
ヘンナを施すスーダン人女性(カイロにて)
 
 
 
 
 
   
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