ちょうど1年程前に、京都市教育委員会の広報誌に、「小中学校の現場で子供 たちにコンピュータを使った、インターネットなどの情報技術の授業をされる先 生方に対して指導や相談をする、アドバイザーとしての臨時職員」を募集する記 事が掲載されていました。臨時職員の募集要項の中で、その職に求められる知識レベ ルとして、「初級システムアドミニストレータの資格、またはそれと同程度の知 識、技術を有するもの」と記されていました。「メディアMAI」という、主婦を 中心としたCAI(Computer Aided Instruction;コンピュータを使った教育)の プログラミング研究会を主宰している立場上、その知識レベルがどの程度のもの であるのか、会員の方から相談を受けました。
求人欄や就職雑誌などにも目を向けると、“初級シスアド有資格者募集”とい う記事が数多く見られます。記事の内容から伺えることは、コンピュータの専門 家でなくてもいいから、常識程度のコンピュータリテラシーを持っているという レベルの人を、「シスアド程度」と表現しているように思われます。シスアドと いう資格試験は、通産省が行なっている高度情報処理技術者を育成するために設 けられた、第一関門の位置付けにある国家試験です。これ以外にも、民間団体が 主催するコンピュータに関する資格試験もいくつかありますが、民間の各団体で 行なっている試験は方向やレベルがまちまちで、特に用語が統一されていないこ ともあり、体系づけられていないのが現状です。コンピュータの専門技術者では ない、一般の人達のために作られたシスアド試験は、仕事の中で情報技術を如何 に活かすかということを中心に出題されています。
では、シスアド試験にはどのような勉強をしたら合格できるのかといいますと、 「情報処理技術に関する幅広い常識程度の知識技術(情報リテラシー)を持つ者」 となっています。常識程度というものの、これが、中年の働き盛りの人にとって、 それほど簡単なものではないのが現状です。それらを学校の正式な授業で習った 人は(情報工学を勉強した人は別にして)、年齢で区切ると現在24歳までの人 達です。25歳から上の私を含めた中年層、そしてシルバー層までの、日本の人 口の4分の3という大量の人達が、正式な情報技術の教育を受けていません。私 はこれらの人達を称して、「情報教育を受けなかった(団塊の世代とはいわずに) “アンチIT塊の世代”」とよんでいます。
パソコンが普及し、どんどん便利になってきて、「便利だから覚えろ」「仕事 に役立てるようにしろ」と言われても、どこから始め、どのような本を読んだら いいのか、書店へ行ってもコンピュータ書の洪水の中で、正式な情報教育を受け ていない、“アンチIT塊の世代”の人にとっては探しようがありません。書籍の 山の前で、ただ呆然とフリーズしてしまいます。
日常の業務に幅広く活かせる、基本からやさしく書いた情報技術の入門書とな ると、あまり適切なものがなく、唯一、シスアド参考書、シスアド受験書などが 浮上してきます。フリーズ中年にとって、シスアドというジャンルの勉強を、再 学習ではなく一から学ぶことが、今世間で求められている“情報技術を活かせ る人物像”に近づける一番の近道のように思われます。
実社会のオフィス空間で求められるシスアド像、25歳以上の正式にコンピュー タ教育を受けていない、“アンチIT塊の世代”が求めているコンピュータリテラ シー、それら2つがシスアドという、半ばスタンダードなITリテラシーを学習し ていくことで、「情報技術を仕事にどう活かしたら良いか」という答えを見つけ 出すことに収束していくように思われます。