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木綿農家・梅田正之先生の特別講義を実施しました

2024-12-19

国際日本文化学科専門科目「日本年中行事論」の授業で、学外からゲスト講師をお迎えしました。お招きしたのは、天理市でH.A.M.A.木綿庵という農園を経営されている梅田正之先生です。梅田先生は、種を播くところから一年かけて株を栽培し、収穫した綿花から糸を紡ぎ出し、その糸を草木染にした後、それを機に通し、布として完成するところまで、一人で行われています。

一粒の種から一枚の布ができ上るまでに、どれほどの労力をかけねばならないか、木綿農家として一年を通して、それぞれの時季にどのような作業が必要かといったお話を、実際の写真を多数交えながらご披露くださいました。

また梅田先生ご自身が若い頃、精神的に方向性を見失い、大変悩まれた時期があったそうで、この農園は、そのような心の問題を抱え、救いを求める人々のために開放されている空間でもあるのだそうです。不登校の子供たちや若者が、この場所で農作業に携わることにより、何人も自分を回復していったといったお話もしてくださいました。

自らの歩まれてきた道や綿花作りの面白さ、昔の人々の暮らしや考え方について熱く語られる御講話をあっという間の90分でした。梅田先生、ありがとうございました。

以下は、受講した学生諸君の感想です(抜粋)。

4年次生 宮﨑知良子さん : 綿の栽培や糸を紡ぐ活動には、日常生活の中でなかなか感じられない、自然との直接的な関わりや手仕事の魅力があると感じた。種を蒔き、成長を見守りながら自分の手で素材を育て、収穫した綿を糸にしていく一連の過程は、時間の流れや人の手の温もりを感じさせるもので、特に現代社会では、すぐに結果が出る便利さや忙しい生活のなかで効率だけが求められがちだが、綿の栽培や紡ぐ作業は、急がずに「待つ」ことや「手を動かす」ことの価値を教えてくれるように思った。
また、こうしたこうした活動が悩みを抱える人にとって居場所になる理由は、梅田さんの人柄と、その作業自体に癒しの効果があるからだと思った。植物を育てることは、責任と希望を感じさせる行為であり、糸を紡ぐ作業は、単調でありながらも少しずつ目に見える形に変わっていく喜びがあり、達成感を味わうことができ、日常の悩みや心配事から一時的に距離を置き、手を動かすことで、心が自然と落ち着き、新しい視点が得られることがあると感じた。さらに、一緒に作業をする仲間との交流が、共感や新たなつながりを生むきっかけにもなると思った。そして、今回の授業を通して綿がどのように成長し、私たちが普段何気なく使っている布がどれほど手間をかけて作られるかに気づかされた。 糸を紡ぐ作業は、単なる生産作業以上に、瞑想や内省を促す行為にも取れると感じたが、生き辛さを抱えた人たちの支援と綿の観点からその精神的な意味や意義についてももっと知りたいと思った。

4年次生 Rさん : 今回の講義で、綿花の歴史や栽培、加工など普段学べない貴重なお話を聞くことができた。特に印象に残ったことは自分自身が苦しんだ経験から居場所づくりを始めたことである。本来なら自分の苦しみで精一杯のところ自分の力で立ち上がり、他にも苦しんでいる方を支えようと居場所をつくる姿に感銘を受けた。私自身も人と関わることが苦手で、カウンセリングを受けているが、このような居場所があることを知れただけ嬉しく思った。 草木染めで、植物によって様々な色に染めることができるところが面白く、どんな植物を使ったらこの色になるのか等興味深いと感じた。

3年次生 今川愛世さん : 今日の講義で、綿のことについて詳しく知ることができました。綿は身近なものではあるものの、綿のことについて知る機会はこれまでなかったのですが、今日の講義を通して、綿の栽培から加工まで知ることができて、綿について興味を持つことができました。
また、綿を通して支援活動を行っているということも、とても興味深かったです。私自身も高校生の頃、些細なことから不登校になってしまい、生きていくことへの辛さを感じた時期がありました。その後、違う学校へ転校した時、同級生に支えてもらっていたが、その多くが辛い経験をして、社会に出られなかったという人達でした。同じ思いをしたことがある人がいると思うと、気持ちが楽になり、その事が私にとって、支えとなり、励ましになっていたということを、今日の講義を聞きながら思い出しました。自身と同じ体験をした人にしか、わからないことも多くあるだろうし、それに支えられる人も多いと思うので、梅田先生の支援活動に救われる人も多いんだろうなと感じました。そして、講義を聞いていた私自身も、こうした支援活動をしてらっしゃる方がいることを知れて嬉しく思えたし、同じ思いをした人がいることを再確認できて、心が少し軽くなりました。今日の講義を通して、綿のことや、支援活動についてなど、これまで知らなかったことをたくさん知ることができました。また、私自身も社会に出れない時を体験しているからこそ、こうした支援活動によって、救われる人たちを想像できたし、支援を求める人の気持ちを考えながら、講義を聞く事ができました。大学生になってから、自分が将来したいことを考える機会が増え、その度に何がしたいのか分からず、もどかしく思っていましたが、今日の講義を聞いて、私もいつか梅田先生のように誰かの支えになることをしたいと思いました。今日の講義で、綿だけではなく、梅田先生の思いも聞くことができ、私もたくさん考えさせられました。まだ社会に対しての不安を抱えながら、毎日を過ごしている状態ですが、自分の出来ることを、自分のペースで頑張ろうと思います。貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。