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金剛流能楽師・今井克紀先生による特別講義・能楽体験

2025-02-27

学科の専門科目「日本伝統文化論」で、客員講師をお迎えし、能楽の特別授業を実施しました。ご出講くださったのは、今井克紀先生です。今井先生は、金剛流能楽師(シテ方)で、重要無形文化財 能楽 総合認定保持者でいらっしゃいます。

授業では、まず能の起源や芸能としての能の特徴について、入門的なお話からしてくださいました。

中国の散楽が、奈良時代に日本に伝わり、猿楽や田楽として広がっていき、それがやがて鎌倉・室町期の大和四座(観世・宝生・金春・金剛各流派)、江戸時代の喜多流の芸能へと発展し、現代まで継承されてきたこと、能楽には多くの曲が伝わっていて、シテ(主人公)の特徴や曲想によって五番立(ごばんだて・五つの種類)に分けられていることなど、能楽を鑑賞したことがない学生たちにとってもわかりやすいお話でした。

御講話のあとは、実演です。能楽「羽衣」を謡います。

それまでのお話をされていた時の先生の声とは異質の朗々たる謡声が教室に響きわたり、学生たちも圧倒されたようでした。最後に、その謡をうたいながら、仕舞を御披露くださいました。

授業では仕舞のお稽古までできなかったということで、後日、今井先生の特別のおはからいにより、関心のある学生たちを「能楽体験」にご招待くださいました。聴講生の方々も参加されました。実際に仕舞を体験してみると、謡い、手足のふり、扇の構えなど、その都度タイミングや形、姿勢を合わせる必要があり、とても難しいことが身をもって感じられました。

それでも身の引き締まるようなすばらしいお稽古場で、能楽の一日体験をさせていただいたことは、参加者一同、伝統芸能がひじょうに身近になったようで、感激していました。中には、ぜひ能楽を習ってみたいと思った人もいたようでした。貴重な学習の場をご提供くださった、今井先生に感謝いたします。

以下、受講生たちの感想です。

私は以前歴史漫画を読んだ時、白拍子の女性たちが踊るものと能楽はとても似ていると思ったことがあった。単なる偶然かなと感じていたが、今日先生から白拍子と能楽の繋がりを学んで、今まで引っかかっていた点と点が繋がって解決できた。今日の授業で能について学んで、テレビではなく、いつかは本物の能を見にいってみたいと思った。

                                         (馬場結子、鹿児島出身)

能楽について深く学ぶことができました。マイクを使わなくても、声が遠くまで聞こえるのがすごくて、感動しました。 

                                    (ヂォン ヂー ティン、中国香港出身)

お能は、テレビで見たことはありましたが、実際に見たことはありませんでした。今井先生の振りやお声がとても美しく、神道で「祝詞」を上げているときの音律と似ており、とても心に響きました。お能のお面の種類もたくさんあり、それぞれどのような物語なのかとても気になりました。特に、「土蜘蛛」の内容が気になっており、お能を実際に見に行きたいなと思いました。 お能も、神話や歴史、文学に基づき、幽玄の要素があることを知りました。神話や歴史、文学のほかにも、舞についても興味があり、今回のお能を見て、日本の伝統文化は奥が深く、お能についても深く学びたいなと思いました。本日は、貴重なお時間を頂きありがとうございました。

                                       (高島綾乃、兵庫県南あわじ市出身)

初めて能楽についての授業に参加しました。難しかったですが、今井先生が京都のことも入れて説明していただいたので面白かったです。特に金閣寺についての話に興味深いでした。先生の歌声は魅力的で目を閉じて、聴かせていただきました。京都にいる間に一度本番の能楽を鑑賞に行きたいです。                                        

                                   (ヴォ テイ スアン ホン、ベトナム出身)

能について知識がなかったので、今回様々なことを教えていただき能への興味が湧きました。先生が実際の動きや謡いを見せてくださいましたが、動きも足腰をたくさん使った難しい動きで、歌も声量や声の出し方など全てを習得するまでに想像以上の練習と時間が必要な芸術だと感じました。さらにお面を被って全てをこなすのは体力もかなり必要なのだなと思いました。このような日本の伝統芸能が現代に受け継がれているのはすごいことで、本当に素晴らしいことだと改めて感じました。今回は貴重なお話ありがとうございました。 

                                             (岡田理愛 岡山県出身) 

前々から能楽に興味はあったものの、敷居の高さや知識不足から、楽しめるか不安でした。しかし、先生のお話を伺い、実際に能楽師の方々の所作を拝見することで、その魅力を深く理解することができました。独特の謡いや所作に感動し、能楽堂へ足を運んでみようという気持ちが高まりました。先生の素晴らしいお話は、また別の機会にもぜひ伺いたいと思います。本日は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。

                                              (吉光里帆 京都市出身)

【能楽体験参加者】

大変良い体験をさせて頂きとっても感激でした。能を舞台で舞うことが出来る体験はめったになく、一生の宝物です。動作~手・足・腰・視線~が難しく、ごちゃごちゃになってしまいました。さらには謡に合わせて舞う、舞う... とても出来ませんでした。しかし、初めてのことですし、何だか心がウキウキしつつも、集中できた気がします。「‘無`の気持ちで舞っています...」と今井先生がおっしゃっていました。また「芸に完璧ということはなく、今よりもさらに良くを目指してお稽古を重ねるのだ」とも。私は、趣味で煎茶道をしておりますが、通じるところがあると思いました。また、このようなことは、準備と人柄が出ると何かのご本に書いてありました。益々、自分磨きを続けていこうとの心境になりました。ありがとうございました。 

                                                (聴講生、四方栄子)