心理学をキャリアに活かす:リレーコラム ―学会発表編― 心理学研究科修了生の学会発表(日本心理学会第88回大会)
心理学科・心理学研究科では、本学で心理学を学び卒業した先輩たちが、その学びを活かしてどのように働いておられるのか、コラム形式で紹介しています。
今回は学会発表を行った先輩からのコラムです。
2024年9月に開催された日本心理学会第88回大会(熊本市の熊本城ホールで開催)にて、心理学研究科修了生がポスター発表を行いました。学会ではどのような研究内容を発表し、質問者とどのようなやり取りをしたのか、学会発表の様子を尋ねてみました。
ちなみに、教員もこの学会で発表を行っていますので、よかったらご参照ください(過去の記事はこちら:教員の夏休みシリーズ vol.1・vol.2)
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- 研究内容
高度情報化社会における大量の情報への接触が、大学生の精神的健康に影響を及ぼしているという仮説のもと、情報処理スタイルと情報過多感を手掛かりとして、影響の有無やその個人差について調査・研究した内容を発表しました。Web調査を実施し、収集した大学生430名のデータに対して統計分析を行ったところ、影響は限定的ではあるものの、情報過多感と精神的不健康の関連や、情報処理の個人差による違いが認められました。情報が溢れる現代社会において、個人の情報への接し方や処理の仕方を精神的な不調の一要因として捉えることは妥当であると考えられ、適切な情報処理スタイルの検討が、青年期の精神的健康への支援の一助となる可能性が示唆されるとともに、今後の課題ともなりました。
- 学会発表を経験して
今回、私はポスター発表という形式で、学会発表をしました。修士論文の内容を1枚の大きなポスターにまとめたものをパネルに貼り、その前に立って、見に来てくださった方に説明をしたり、ご質問やご意見をいただいたりしました。発表前夜、宿泊したホテルの一室で一人、発表の練習をしながら緊張が最高潮となり、「なぜ私は学会で発表しようなんて思ったんだろう…!?」とちょっと後悔をしたのですが、発表後はその考えが180度変わるほど、よい経験となりました。
会場には、大会に参加されておられる心理学研究科の先生方もおられ、励ましてくださり、だんだん緊張もほぐれていきました。質問に来てくださった方々は、本当に様々でした。情報を取り扱った研究を考えて参考に見に来たという学部生の方とはよい交流ができましたし、情報過多感が自分にとても当てはまるから見に来たという方は、なんだか本当にしんどそうだったので、ちょっと心配になると同時に、修論で扱った情報過多感の存在を実感することもできました。また、掲載したモデル図をじっくり見て、「ここにパスがあるはずなのに、おかしいな。ちょっと因子分析結果を見せてもらえますか。」とおっしゃられ、私自身、そこにパスが現れずに悩んだところを、真剣に検討してくださった方もおられました。修士論文を書いた際には、そのパスが現れなかったことを簡単に受け入れて考察しましたが、この方のように、「パスが現れるはずだ」「なのに現れないのはなぜか」という視点から考えるということを学び、とても勉強になりました。修士論文は提出期限があるため、どうしてもデータをじっくり検討する時間が限られてしまいます。学会で発表することで、もう一度、統計結果を別の視点も取り入れながら見直す機会が生まれることも、とても貴重な経験でした。
- 学会や当日の会場の様子
大会は3日間開催されました。日本心理学会は扱う領域が広く、様々なジャンルの発表やシンポジウムが複数の会場で次々と行われるので、興味のあるものを選んで見て周るのが楽しく、勉強にもなりました。ポスター発表の会場にも足を運びましたが、沢山の方が発表されており、大盛況でした。ポスター発表は、1ターン100分で1日4回入れ替わります。私自身の発表の時、持ち時間の開始の5分前ぐらいにポスターを貼ったのですが、貼った瞬間に質問者がいらっしゃいました。パネルの前に無造作に鞄を置いたまま発表に突入してしまい、ずっとそのままになってしまったので、これから発表される方には、パネル前を整えてから、ポスターを最後に貼ることをお勧めします。来場者の皆さんは、1つでも多く発表を見ようとされて、貼られたポスターからどんどん見て周るようです。研究者の方々の意欲や熱意を肌で感じた体験でした。
ポスター発表の様子
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発表の様子を後方から見ていましたが,100分のポスター発表の間,途切れることなく多くの質問者の方が来られていました。学会発表は学生の皆さんにとっては(もちろん研究者もですが)緊張したり,不安になることもあるかと思いますが,研究をまとめている時には気づかなかったことに気づけたり,全く別の視点から助言を頂いたり,研究仲間が拡がったりと大変貴重な機会です。
心理学研究科では,大学院生の学会発表や研究会への参加・発表を推奨しています。昨年度も複数の修了生が参加しましたが,今年はM1の皆さんも集中講義の合間を縫って学会に参加するなど,研究活動にも積極的に取り組んでいます。今後も研究科では,学生さんたちの様々なチャレンジを応援していきます!
担当:本学心理学研究科修了生 Sさん,松島るみ、広報担当