中高大学生を対象に「生理」に関する調査を行いました―生徒・学生の声から見えてきたことは?―
2023年度に引き続き,心理学演習(3年次ゼミ)の松島ゼミ・尾崎ゼミでは、2024年度も,「女性特有の健康課題」をテクノロジーで解決することを企業理念としている「フェムテックジャパン」様と産学連携を行い,「誰もが快適な生理を」プロジェクトを行いました(昨年度の発表会の様子はこちら)
2023年度は大学生のみの調査でしたが、2024年度は対象を女子中学生・高校生にも広げ,中・高・大学生の生理に関する実態や、困りごとについて明らかにし、より快適な生理期間を過ごす為のヒントを得ることを目的に調査を行いました。
具体的には、女子中学・高校、133名、大学生146名を対象に、生理用品の使用状況とそれに付随するトラブル、生理の症状、生理における理解・知識、生理に関する知識・情報・教育経験、生理の記録、生理用品の設置について尋ね、中高大学生の比較も行いました。
2024年12月には、調査対象となったノートルダム女学院高等学校の1年生に本学に来て頂き、調査結果のプレゼンを行いました。
約40名の生徒さんと高校の先生方にプレゼンを行いました
高校生からの質疑応答にも回答
学生が実施した調査結果の概要は以下の通りでした。
1.生理に関する実態について
普段使用している生理用品は、中、高、大学生ともに圧倒的に紙ナプキンが多く、高校生、大学生では9割を超えましたが、中学生はノンポリマーナプキンや吸水ショーツが高校生・大学生より多く、保護者からの提供や勧め等があることが推測されました。生理痛等の症状で辛い時に周知に伝えるかどうか」については、「伝える・たまに伝える」の割合が大学生と比べ、中学生、高校生の割合が低い傾向ことが明らかになりました。
2.「生理の症状」による欠席等について
他の人(同級生等)が生理痛等で授業や部活・学校を休むことについて、全体的には肯定的な意見が多く、8割前後は「休むのは当然」と回答しました。一方、「生理が原因で休んだことがあるか」の割合は、中学生が最も少なく、休んだことがある者の割合は3割弱となりました。
3.生理に関する知識
生理に関する基礎的な知識について尋ねたところ、全ての学校段階で高い正答率が得られました。高校、大学生や母親、中学生は学校の授業で情報を得ている者が多く、また大学生では、インターネットや生理管理アプリ、友人、SNSといった幅広い情報源を持つことが明らかになりました。学校の授業で習った記憶がある知識については、高校生の割合がどの項目も高い傾向にあり、中学生との差が大きくみられました。
4.学内における生理用品の設置
学内に生理用品が設置されたら使いたいか、の問いについて、大学が最も使いたいという割合が多く9割、中学生は7割強でした。大学生の場合は、実際に学内で無料配布の実績があることが影響していると推測され、中高生の場合は、前述の通り家族のものを使用しており不便を感じていない可能性があります。中学生は設置を積極的に求める割合が高校、大学よりは少なかったものの、「急な生理がきて困った」という割合は約6割となりました。また「生理用品を忘れて困った」という割合は最も低かったものの4割は肯定していることから、まだ設置をしていない中学や高校については、設置について一考することが望まれます。
5.生理期間の記録
生理期間を記録しているかについては、中高大と学校段階を経るにつれ記録している割合が大きくなり、中学生は4割、高校生は半数弱、大学生は6割という結果でした。管理方法は、高校生、大学生はアプリが多く、中学生の場合も、アプリが最も多かったものの、高校生や大学生よりもカレンダーや紙の手帳等の記録を選んだ者が一定数みられました。
中学生の場合は、高校生や大学生に比べて、生理の辛さを人に伝えることをためらう傾向もみられ、また親の影響を受けて生理用品を選ぶ傾向もうかがえました。それぞれが主体的に生理に向き合ったり、困りを相談しやすくするにはどうすればいいか、今後も検討が必要です。
この授業に関しては、産学連携交流会でも学生や教員により発表しましたので、こちらの記事もご覧ください。
またフェムテックジャパン様のプレスリリースもご参照ください。
「生理」「月経」に関するテーマは、かつてのようなタブーではなくなりつつある、と感じる一方で、最近、ある県議会議員が「トイレットペーパーのように生理用ナプキンをどこでも置いて欲しい」とSNSに投稿したところ、多くの議論を呼び、賛否両論の声が寄せられたことが話題となりました。こうした反応は、日本社会におけるジェンダー平等や女性の健康課題への意識の現状を示すものと言えるかもしれません。
授業では引き続き、女性の健康課題の解決、ジェンダー平等について、学生とともに考えていきたいと思います。
報告者:松島るみ・尾崎仁美