教育評価とは
教育という営みにおいて,教師が重きを置くのは教育方法でしょう。大学の授業でも,学生たちは,指導案を書くことに熱を注ぎ,模擬授業に臨みます。教育実習も然り。しかし,教育現場は,授業だけでは終わりません。むしろ,教育が目標を達成するように機能しているかを絶えず点検,反省,改善することが,教育の質を高めるには重要です。このような自らの教育の点検,反省,改善のサイクルを「教育評価」といいます。
そして,「教育評価」は子どもの姿を基に行うわけですが,これが非常に難しい。教育現場に出ると,指導と同じくらい評価に戸惑います。特に,記述を求める国語科では,評価の判断がとても困難である場合があります。

本学の「教育評価」の講義の一例を紹介しましょう。ある学生が教材「くじらぐも」を用いて,次のような問題を作成しました。「くものくじらにのっているときの子どもたちは,どんな気もちだったでしょう」この問題に,小学1年生になりきった学生が,「マシュマロにのったような気もち」と記述しました。この回答について,学生の中で次のような議論が展開されたのです。「これは,評価規準の『登場人物の気持ちを考えることができている』に該当するのかな」「『マシュマロにのった』っていうのは,すごく想像力が豊かと言えるよね」「私は,この子どもの気持ちを分かってあげたい」「でも,どうして『マシュマロ』と表現したのかという理由が分からないと,十分な回答とは言えないのではないかな」等々。子どものことを知っている教師だからこそ,つい「この子どもは,きっと,こういうことが言いたかったのだろう」と推測して評価をしてしまいがちです。そのように,子どもの背景を鑑みながら評価をする視点も,非常に重要だと思います。しかし,そのような評価が果たして,教育評価になるのか,ひいては本当に子どものためになるのかを考えることは,もっと重要です。学生の結論は,「この子どもは,とても想像力が豊かだから,そのことを褒めつつも,『例えば,マシュマロにのったみたいにふわふわして楽しい気もちと書くと,もっと自分の考えが読んでいる人に伝わるよ』というように指導をするといいのではないか」というものになりました。採点をして終わるのではなく,一人ひとりの子どもにどのような指導をすれば,より力を育成できるのかを考えた学生たちの学びに,将来の教育者としての光を感じました。
担当:廣口 知世