50年後の世界
ライフプランという授業を担当しています。
みなさんが大学を卒業された後の生き方を一緒に考えようという授業です。私の役目はみなさんに、「未来」を考えてもらうための様々な素材を提供することですが、これが難しい。
今から55年前、大阪で1970大阪万博が開催されました。この万博は「未来の世界がどうなっているか」を予想しあうような展示が多く、経済学者や人類学者、そして社会学者が中心となり、近未来の社会を示してくれました。未来学、という社会科学が生まれそうな勢いでした。
が、万博直後に起きた2つの大きな経済事件・・ニクソンショックとオイルショックを未来学は全く予見できず、社会科学が未来を語るのは無理だった、という雰囲気が生まれます。現状認識による近未来(ほんの数年)のいくつかのパターンの提示まではできても、5年や10年というスパンでの社会予測はあきらめよう、というものです。実際、ソビエト連邦の崩壊やアフリカの人口爆発、スマホやAIの急激な普及など、世界は恐ろしい勢いで変化してきました。アジア人が世界のヒットチャートや大リーグの頂点に立つなど、誰が想像できたでしょうか。
そんな時代に、みなさんの50年を考えよう、ということに挑むのはなかなか大変です。AIと経済の2極化は、今までの世界を根本から変える可能性があります。異常気象は人間だけでなくあらゆる生命の生き方を変えてしまうかもしれません。この大きな変化に対して、私たちは何を準備するべきでしょうか。
2025関西万博。環境と生命という生化学が主導したこの万博の中で、いくつかの近未来の暮らしのヒントが示されていたと思います。ひとつは、大きくないコミュニティ・・スマートシティの中である程度完結するという生き方、循環を大事にするという考え方ですね。もう一つは、命との向き合い方。人は何のために生きるのか、生とは何かを考えぬくという生き方。アートとのかかわり方、自然環境とのかかわり方がとても大事になります。
これからの幸せは、地位や財産だけでははかれない、従来の経済学や社会学が信じてきた価値とは違うものになるでしょう。社会の予測不可能な変化を前提にして、自分の幸福をしっかり守る。幸福感に価値を置いたライフプランの構築に、挑戦してみたいと思っています。