ことばの研究会


 
 平成25年3月7日(木) 15:00〜16:20
 「スレーザーの『スコットランド名所図絵』(1693年)
―本学図書館所蔵新資料について」
    発表者:人間文化学部人間文化学科教授 服部昭郎先生

  学長統括プロジェクト主催、平成24年度第3回「ことばの研究会」が平成25年3月7日(木)、本学マリア館ガイスラーホールにおいて開催され、本学人間文化学部人間文化学科 服部昭郎教授より「スレーザーの『スコットランド名所図絵』(1693年)―本学図書館所蔵新資料について」のテーマで研究発表が行われました。
 研究会の冒頭、司会の小山哲春准教授から、今回の研究発表が今年度末で退職の服部教授にとって本学における最後の発表であり、また藪内学長のもとでの研究会としては最後の開催となることが述べられました。続いて、藪内学長から自身のスコットランド訪問時の体験を交えた挨拶がありました。
 研究発表では、本学図書館所蔵の『スコットランド名所図絵』(1693年初版)(Slezer’s Theatrum Scotiae, 1693)の内容を参照しながら、ジョン・スレーザーの人物像、タイトル頁に太字で強調されているprospectsという語にスレーザーが込めた意味、銅版画の技法、描かれた土地や建物、解説テキストの執筆者ロバート・ジバルドなどについて紹介されました。

 とくにprospects という語については、この書物を理解するうえで重要であり、基本的な語義である「何かを予想する」とは異なる「景観図」という意味で使用されているが、スレーザーがこの語を使用する際に意図しようとした語義にはこのふたつの意味が混ざり合っているのではないか、との考察が示されました。そして、この語に込められたスレーザーの思い、すなわち外国人であるスレーザーを親切にもてなし、軍人職を与え、出版の援助をしたスコットランドの人々とその土地へのスレーザーの深い感謝と、スコットランドの未来への思いが、当時のスコットランドの状況と関連づけて解説されました。
 発表後の質疑応答では、スレーザーの軍人としての生活と銅版画制作の関係、銅版画制作において使用されたcamera obscura(カメラ・オブスクラ)の技法、服部教授にとってのスコットランドの魅力などについて質問があり、参加者からも意見や感想が述べられました。そのなかで参加者より原タイトルのTheatrum Scotiae のTheatrum(英語:Theatre)には、「戦域」の意味があるとの 指摘がなされました。
終始和やかな雰囲気で研究会はすすみ、研究会の最後には服部教授へ長年の感謝をこめて花束が贈られました。


 
   平成24年12月14日(金) 17:00〜17:50
   「コミュニケーションに潜む落とし穴」
    

発表者:本学生活福祉文化学部生活福祉文化学科 教授 山本智也先生

 学長統括プロジェクト主催、平成24年度第2回「ことばの研究会」が平成24年12月14日(金)、本学マリア館ガイスラーホールにおいて開催され、本学生活福祉文化学部生活福祉文化学科 山本智也教授より「コミュニケーションに潜む落とし穴」というテーマで研究発表が行われました。
 今回の発表は、米国の文化人類学者・精神医学者であるグレゴリー・ベイトソン(Gregory Bateson, 1904 - 1980)が1956年に発表した「ダブル・バインド(二重拘束)理論」について、山本教授が子どもの保護者向け講演の際にも、話されている身近な事例を通して紹介されました。
 発表では、まずダブル・メッセージについて、発言内容と態度や表情・態度が一致していないとして工事現場やお店の看板も例に取り、ユーモアを交えた解説がありました。
 そして、ダブル・バインド・メッセージについて述べられました。このダブル・バインドとは、先に挙げたダブル・メッセージの受け手がその関係から逃れることを禁止されており、かつ、この状況が繰り返される状況です(Bateson, G., Jackson, D. D., Jay Haley & Weakland, J., "Toward a Theory of Schizophrenia", Behavioral Science, vol.1, 1956, 251-264. ベイトソン著、佐藤良明訳『精神の生態学』思索社、1990年)。
 
 こうしたダブル・バインド・メッセージにさらされた受け手は、自分の知覚を信頼することで育つ「現実検討能力」が発達させることができず、1)メッセージの文字通りの意味しかとらえられない、2)メッセージの裏の意味のみを捉える妄想的な反応を起こす、3)コミュニケ―ションそのものから逃避し、自己の内面に閉じこもるといった反応を来すとしたベイトソンの見解が指摘されました。
 さらにダブル・バインド・メッセージの知見を生かした逆説療法についても取り上げられました。その上でコミュニケーションにおいては、ダブル・メッセージをなるべく避け、矛盾した関係から逃れやすくすることが重要であるとの指摘がなされました。
 発表後の質疑応答では、ダブル・メッセージとメタ・メッセージの関係、ダブル・バインド・メッセージの受け手の姿勢、ダブル・バインドを解除するために有効な方法、ダブル・バインド・メッセージを発する側の問題点(表情と感情の不一致など)などについて質問や意見が参加者から出され、それぞれが身近な人間関係を想起しながら活発な意見交換が行われました。

 

 
   平成24年11月20日(火)  17:00〜18:10
   発表:「小学校の教科書に載っている文学作品を読む」
    発表者:本学心理学部心理学科 准教授 工藤 哲夫先生
 
 

  学長統括プロジェクト主催、平成24年度第1回「ことばの研究会」が平成24年11月20日(火)、本学マリア館ガイスラーホールにおいて開催され、本学心理学部心理学科 工藤哲夫准教授より「小学校の教科書に載っている文学作品を読む」というテーマで研究発表が行われました。
 今回の研究発表では、5社の小学校国語教科書すべてにおいて採用されている『お手紙』(アーノルド・ローベル作 三木卓訳)を題材に、作品分析から教材化にいたる道筋が詳細に紹介されました。(作品分析と教材化については、田近洵一(1996)『創造の〈読み〉』の「作品分析の観点」と「学習活動の視点」の方法を使用)
 まず教科書のページ数にして15ページほどの短いこの作品を、「細部の読み」、「語り・語り手の読み」、「プロット(展開・因果関係・構成)の読み」という観点から細かく分析し、とくに登場キャラクターの「かえるくん」の気持ちの変化と成長に注目した読みが提示されました。次に、作品分析をもとに作品を教材化する際の観点が紹介され、最後に工藤先生が作成した生徒への発問と、教科書に載っている発問の比較がなされ、同じ作品を扱っても、作品分析の内容や教材化の観点によって全く異なった教材が出来上がることが示されました。
 研究発表後は、文学作品を教科書で読むことと個人的に楽しんで読むことの違いや、『お手紙』が全社の小学校教科書で採用されている理由などについて、活発な意見交換が行われました。

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