学長メッセージ/歴史・沿革
学長メッセージ

ひとりひとりと向き合い、
対話することを大切に 新しい学びを提供します
創立母体であるノートルダム教育修道女会は「人が変われば世界も変わる」という言葉を掲げ、女子教育の重要性を説いて設立されました。その経緯から、本学も創立以来、女性のエンパワーに専心してきました。モットーは「徳と知」。豊かな人間性と物事を見極める知性の涵養を目指します。
本学は、言語や文学、生活、心理、教育といった分野の専門教育を行う2学部、5学科に加え、諸分野を学際的に学びながら、“情報”と“キャリア”のキーワードで、IT活用力や実践力を身に付け、リーダーシップを養成する2つの学環から成ります。カトリック教育に加え、“国際性”や“情報”、“女性のライフキャリア”を全学教育の柱に据えています。
京都、北山にある落ち着いた雰囲気のキャンパスで、「わたしらしく、誇らしく」成長していく学生を、小規模女子大学のメリットを活かし、教職員全員で温かく見守ります。
皆さん、ご入学おめでとうございます。
ご家族の皆様にも、心よりお慶び申し上げます。
新たなノートルダム・ファミリーとして、新入生の皆さんを歓迎いたします。
とはいえ、今や高校卒業後、4年生大学へ進学する女子は昨年度で51.7%、半数を超え、しかも、3年前より18歳以上を成人とする民法改正により、入学時点ですでに皆さんは大人とされています。つまりひと昔前の入学生に比べ、大学生であることの希少価値は減り、社会的責任は増しているといえます。しかも世の中は、人工知能(AI)とロボットが社会を席捲しようかという時代です。
単純労働の機械化などという生易しいものではなく、ホワイトカラー層が大量失業の憂き目にあおうかという時代に、近年、大学高等教育のあり方が世界中で議論されてきました。日焼け止めなどに表示される「ウオーター・プルーフ」(耐水性)という言葉をもじってつけられた“ロボット・プルーフ”(ロボット耐性)という書名の、アメリカ発大学教育論が日本でも紹介され、話題になりました。著者はアメリカ東海岸で教育力に定評のある、ノースイースタン大学のジョセフ・E・アウン学長、です。
それによると、AIには無い人間固有の能力として、創造性(クリエイティビティ)と柔軟性(フレキシビリティ)をあげ、それらを高めることが重要としています。具体的には、データやデジタル技術への基礎理解と、コミュニケーションや共感力を基盤にして、その上にさらに批判的思考や、物事を整理しながら全体像を描くシステム思考、自ら事業を起こす力アントレプレナーシップ、異なる文化に機敏に適応する異文化アジリティ、以上の4つの力を養うことが重要としています。
人としてロボット・プルーフ(ロボット耐性)を身に着け、ロボットの上に立つには、とにかく力をつけて自信を持たねばなりません。教室で辛抱強く講義を聴いているだけでは、何も身につかないだろうなということは、皆さんにもわかると思います。そもそも能力が身についたかどうか、どうやったら実感でき、自分に自信が持てるのでしょう。
本学では数年前、何人かの学生の成功体験のヒアリングをしたことがあります。この場合の成功とは、力が付いた、成長できたと実感できたことを意味します。最終的に集まった30名以上の体験談は、実に多様でした。人見知り故に2年生になってやっとできた友人から次々刺激を受け、一緒に授業課題に取り組んだりボランティア活動をする中で、自信が身に付き誰とでも話ができるようになった人、教育実習に行くための模擬授業実習でボロボロになったのを機に、「ビジネスプレゼン」の授業を自分で見つけて受講し、見事リベンジを果たして教師の道を切り開いた人、学園祭の実行委員長に手を挙げ、多くの学生スタッフと共に懸命に企画、準備したら記録的な来場者を得て大成功を収め、自身のリーダーシップを実感したという人、などなど。
聴き取った30人余りの学生エピソードは、ゼミや実習の中で、あるいはボランティア活動や学園祭など、様々な活動を通じて成長を実感し、自信をつけたということですが、共通するのは、いずれも自分からまず第一歩を踏み出したことがきっかけになっている、ということです。「自分で調べる」「友人に相談する」「先生に問いかける」「代表者に手をあげる」「グループに参加する」、踏み出す方向はいろいろでも、自ら新たな経験にチャレンジしようという、その第1歩が彼女たちにはあったのです。
AIの影も形もない60数年前に創立された本学の建学の精神は、「徳と知」。その時代から、知性と人間力、両方を磨き続けることの必要をうたってきました。しかも雲をつかむようなこの「徳と知」の追求を、4つの動詞から成る行動指針としてわかりやすく示しています。「尊ぶ」「対話する」「共感する」「行動する」。この4つの動詞は、AI時代を生きる私たちのよすがになると同時に、成長に導く第1歩を踏み出す勇気をあなたに与えてくれるでしょう。
先に紹介した教育論「ロボット・プルーフ」では、ロボット耐性の獲得を目指して必要な4つの力をつけるため、経験学習を推奨しています。本学も学科や学環、ゼミ、グループなど、様々な単位で取り組む地域や企業との連携活動や、海外研修、海外ボランティアなど、大学外の人たちとの関りや、大学の外に出かけていく経験学習に力を入れています。それらを支える、制度や体制、施設・設備も整えています。これら本学の教育資源を、どうぞフル活用してください。教職員全員で、サポートしていきます。明日から始まる大学生活で、ささやかだけど輝かしい第1歩が、皆さんの間から次々に生まれることを期待しています。
2025年4月2日
京都ノートルダム女子大学
学長 中村 久美
皆さん、ご卒業おめでとうございます。
ご家族の皆様にも心よりお慶び申し上げます。
式冒頭、久しぶりに合唱団の先導による、卒業生皆さんの学歌斉唱がありました。思えばコロナ禍にあっては、学歌を歌う機会はなくなり、マスクに黙食と、声出し禁止を余儀なくされました。それだけに今年度、コロナ禍の暗い影など完全に払拭され、行事やイベントの度ごとに、学生の皆さんの歓声がキャンパスに満ち溢れる様子に、それでこそ大学と感じ入ったものでした。
ちょうどND祭のころです。女性の声に関する短い論評を新聞でみかけました。タイトルは「日本人女性の声は世界一高い?」。記事を読むと、確かにデータを比較しても、日本人女性の話す声は、世界で最も高音の部類なのだそうですが、問題は、本来もっと低い声のはずの人まで、甲高い声を発する傾向にあり、それは社会が、もっとはっきり言えば男性が、それを暗黙のうちに求めているからだというのです。声の高さは、体の小ささを表すそうです。女性が不自然に高い声を出すのは、小ささ、かわいらしさを演出するということ。そしてそれは日本の社会が求めるものだということです。そういえばアメリカやヨーロッパのニュースに出てくる女性アナウンサーに比べ、日本の女子アナは、声も見た目もかわいく、未熟な印象を受けます。記事にも書いてありましたが、ジェンダーギャップの極めて小さい北欧では、女性アナウンサーの声はひときわ低いそうです。
男の子は青、女の子はピンクという、服やサインによる色分けなど、小さい時から刷り込まれがちなジェンダーバイアスはよく指摘されますが、同様に、女性が人前で思わず甲高いかわいい声を発してしまう裏には、「らしさ」への暗黙の強要と、それへの無意識の同調があり、それはジェンダーギャップが遅々として埋まらない社会に生きる日本人の根底に、張り付くように存在する、アンコンシャス・バイヤス(無意識の思い込み)によるものだといえます。自分の声に自信がない、あるいは自分の声が嫌いな日本人が多いと記事にありました。皆さんもそのような気持ちをもっておられるかもしれません。ですが、人の声はまちまちで、唯一無二のもののはずです。それが無意識的に社会の求めに応じてゆがめられているとしたら、とても残念なこと。皆さんには、できるだけ自分本来の声で、自信をもって言葉を発していただきたいと思います。
そもそも声に限らず、性別や年齢、身体的特徴や志向性など、それぞれの人がもつ特徴は如何様であれ、認め合い、尊重し合おうというのが、現代社会がこれまで積み上げてきた考え方でした。
DEIというスローガン、どこかで目にしたり耳にしたことがあるかと思います。Diversity(多様性),Equity(公平性),Inclusion(包摂性)、この3つを表し、多様性や公平性を尊重し、誰もが受け入れられる包括的な組織や、社会を実現しようとする世界的な取り組みを指します。1月20日に就任したトランプ大統領は、直後に、アメリカにおけるこのDEIを終了する旨の大統領令に、署名しました。それを受けてアメリカ国内では、企業がそのスローガンをおろすことを表明したり、DEI促進を目的とする組織や団体が、次々に解散しているとの報道があります。
多様な人が共にいる状況は、必ずしも気楽で居心地がよいというわけではなく、効率や生産性の点で有利とはいえないかもしれません。それどころかやっかいなことであり辛抱強さが求められるゆえに、無しにしてしまえとの暴論が生まれるのでしょう。
では日本ではどうでしょうか?少なくともここに集う私たちには難しいことではないはずです。なぜなら本学には共有財産としてのミッション・コミットメントがあるからです。「尊ぶ」「対話する」「共感する」「行動する」この行動指針を大切にする限り、何ら臆するものではないはずです。
皆さんは、ジェンダーや年齢には偏りがあるものの、それらのギャップによる学びづらさや制約からは護られた環境の中で、のびのびと学ばれました。学生同士、互いの個性を尊重しあうと同時に、世代は異なるものの距離の近い教職員との関りや、地域や企業との連携活動を通じて、さらには海外留学、研修における多様な人たちや組織との交流から、DEIに関する貴重な経験を得たはずです。それを糧にして、誰にとってもより良い社会の構築のために、貢献していっていただきたいと思います。自分らしく、自分の声で、自分の言葉を、自分たちの未来のために、どうぞ元気よく発信していってください。皆さんのご活躍を期待しています。
2025年3月8日
京都ノートルダム女子大学
学長 中村 久美
歴史・沿革
1833 |
マザーテレジア・ゲルハルディンガーによって、ドイツのバイエルン王国にノートルダム教育修道女会創立 |
1847 | マザーテレジア・ゲルハルディンガーと4人のシスター、渡米 さまざまな困難とたたかいながら、貧しい移民の子どもたちの教育に携わる |
1948 |
米国セントルイスから修道女会の4人のシスターが京都に派遣される |
1952 | ノートルダム女学院中学校設立 |
1953 | ノートルダム女学院高等学校設立 |
1954 | ノートルダム学院小学校設立 |
1961 |
ノートルダム女子大学設立 |
1963 | 文学部生活文化学科開設 |
1979 | 本学から海外への留学始まる |
1999 |
大学名を「京都ノートルダム女子大学」と改称 |
2000 | 文学部を人間文化学部に名称変更 人間文化学科、生活福祉文化学科、生涯発達心理学科開設(生活文化学科を改組) 海外からの留学生受入始まる |
2001 | 創立40周年記念事業開催(記念式典、国際シンポジウムなど) |
2002 | 大学院人間文化研究科応用英語専攻(修士課程)開設 |
2003 | 大学院人間文化研究科 生涯発達臨床心理学専攻(修士課程)開設 心理臨床センター設置 |
2004 | 大学院人間文化研究科生活福祉文化専攻(修士課程)開設 |
2005 | 心理学部心理学科開設(生涯発達心理学科を改組) 大学院心理学研究科発達・学校心理学専攻(博士前期課程)、臨床心理学専攻(博士前期課程)開設(生涯発達臨床心理学専攻(修士課程)を改組) 心理学専攻(博士後期課程)を開設 大学院人間文化研究科人間文化専攻(修士課程)開設 |
2007 | 生活福祉文化学部生活福祉文化学科開設(生活福祉文化学科を改組) |
2011 |
2011年 創立50周年 「北山キャンパス総合整備計画」の一環としてノートルダム館(京都工芸繊維大学構内)完成 |
2013 | 心理学部心理学科現代心理専攻開設(発達心理専攻より名称変更) |
2015 |
全館リニューアル完成 創立50周年記念事業として進められてきた北山キャンパス総合整備計画により、全館リニューアル |
2016 | 徳と知教育センター設置 |
2017 | 現代人間学部福祉生活デザイン学科、心理学科、こども教育学科開設 (生活福祉文化学部、心理学部を改組) |
2019 | 国際言語文化学部英語英文学科、国際言語文化学部国際日本文化学科開設 (人間文化学部英語英文学科、人間文化学部人間文化学科より名称変更) |
2021 |
創立60周年事業開催。 2021年 創立60周年 マリアンモニュメント |
2023 |
社会情報課程開設 |
2025 |
女性キャリアデザイン学環、社会情報学環(社会情報課程より名称変更)開設 |