学長メッセージ/歴史・沿革
学長メッセージ
ひとりひとりと向き合い、
対話することを大切に 新しい学びを提供します
創立母体であるノートルダム教育修道女会は「人が変われば世界が変わる」という言葉を掲げ、女子教育の重要性を説いて設立されました。その経緯から、本学も創立以来、女性のエンパワーに専心してきました。モットーは「徳と知」。豊かな人間性と物事を見極める知性の涵養を示します。
本学は、文化や言語、文学、生活、心理、教育といった分野の専門教育を行う2学部、5学科に加え、諸分野を学際的に学びながら、“情報”と“キャリア”のキーワードで、IT活用力やプレゼンテーション力などの汎用力を身につけていく2つの学環から成ります。カトリック教育に加え、“国際性”や“情報”、“女性のライフキャリア”を全学教育の柱に据えています。
京都、北山にある落ち着いた雰囲気のキャンパスで、「わたしらしく、誇らしく」成長していく学生を、小規模女子大学のメリットを活かし、教職員全員で温かく見守ります。
皆さん、ご入学おめでとうございます。
ご家族の皆様にも、心より御慶び申し上げます。
皆さんは2020年4月、新型コロナウィルス感染流行による第1次緊急事態宣言が発令されたとき、中学3年生でした。その直前に全国一斉休校を経験され、高校進学後もコロナ禍で学び、終息の気配がみえたときには、大学受験が迫っていたわけです。制約下の高校生活において、自分の将来や目標を明確に描けないまま、この入学式に臨まれている方も少なくないかもしれません。
そもそもコロナ禍以降、世界を見渡すと、気候変動による激甚災害や各地で長期化する戦争、コロナ禍でいっそう顕在化した経済や男女の格差、さらには人類の未来に脅威となるかもしれないAIの、想像をはるかに超える進化など、人類史上まれに見る激動期の様相を呈しています。しかもそのような大変革期にあっても、報道で目の当たりにする日本の政治や社会のしくみは、行き詰まったまま、世界から取り残される一方です。
皆さんはコロナ禍で思春期を過ごし、その時々の学校生活の不都合を乗り越えるのに精いっぱいで、これまで世界の動向や日本の社会の問題に目を向けることはなかったかもしれません。ですが4年後には課題山積の真っただ中に、その担い手として、出ていくことになるのです。
若者の社会問題や社会参加に対する意識をみた内閣府の調査があります。日本、韓国と欧米7カ国の13歳から29歳の若者に対して行った、社会参加に関する最近の意識調査では、「自国のために役立つことをしたい」とする割合は、日本の若者も半数弱が「はい」と答え、他国と遜色ないのですが、「社会をよりよくするために問題解決に関与したい」とか「国や地域の担い手として政策決定に参加したい」とする割合は、他国の若者と比較して群を抜いて低く、「自国の将来は明るいと思う」とする割合も、日本の若者が極端に少なくなっています。さらに欧米と日本を含むアジア、計9か国の18歳の若者の意識をみた別の調査では、社会課題について家族や友人と議論することがあるとする割合は、欧米3か国の若者が70%前後、日本以外のアジアの5か国でも50%を大きく超えるのに対し、日本の若者の割合はたった27%。とびぬけて低くなっています。
両調査から見えてくる日本の若者は、社会課題に対する関心が薄く、社会参加に対しては極めて後ろ向きです。
世界を覆う環境問題や安全保障、経済や男女の格差問題を、自分の手には負えないよそ事としてしまってよいでしょうか。あるいは、日本の社会を構成する人たちの多様性と、その多様な人たちが抱える様々な生きづらさに、無頓着でいてよいでしょうか。大学進学を選ばれた皆さんは、興味ある分野を学ぶこと、自立のために資格を取ることなど、当座の目的はいろいろであったとしても、いずれもその先は、よりよい社会を目指すその担い手に自分も加わるのだという考えを、是非持っていただきたいと思います。
本学の創立母体は「ノートルダム教育修道女会」です。そしてこの教育修道女会は、混沌とした社会の秩序化に女性の力が必要であるとの認識から、立ち上げられたものです。その際掲げられたのが「人が変われば世界も変わる」ということば。世の中を平和なより良い社会にするのは、人の力、女性の力とその協働であるというのです。
そのような設立経緯を持つ本学の建学の精神は徳と知。それを体現していくための行動指針として、「尊ぶ」「対話する」「共感する」「行動する」この4つの動詞で表すミッションコミットメントを大切にしています。
60年以上にわたって女性をエンパワーしてきた本学の、守られた温かい環境のもと、皆さんには外の社会をしっかり認識しつつ、本学での学びから自分の力を蓄えて、自信をもって4年後に社会に踏み出して行っていただきたいと思います。そのような皆さんを、私たち教職員は全力で応援します。これからの学生生活で、社会的存在として着実に成長されることを、大いに期待しています。
2024年4月2日
京都ノートルダム女子大学
学長 中村 久美
皆さん、ご卒業おめでとうございます。
ご家族の皆様にも、心より御慶び申し上げます。
皆さんはコロナ禍に突入した2020年4月、私が学長として最初にお迎えした学生です。初めてのオンライン授業を、受け手と送り手、立場は違えど共に経験し、コロナ禍を乗り越えた同志でもあります。
覚えていますか?皆さんが全学必修としての「ノートルダム学」最後の受講者になったのですが、その4回目の授業で、私はカトリックの女子大学で学ぶ意義についてお話しました。その際ご紹介した「ジェンダーギャップ指数」。授業では2019年のデータを紹介したのですが、その時日本は世界で121位でした。そして今、最新の2023年のデータでは125位。公表されるたびにマスコミが取り上げ、社会に警鐘を鳴らす割には、少しも日本の社会は変わらず何の進歩もありません。
そのような閉塞感の中で日本でも話題になったのが、2023年度ノーベル経済学賞を受賞した、アメリカの女性経済学者クラウディア・ゴールディンの著書「キャリアと家庭 女性たちの平等へ向かう100年の旅」でした。日本語版邦題は「なぜ男女の賃金に格差があるのか」です。
本書は1900年代から今日に至るまで、大学教育を受けた女性たちを、世代ごとに5つのグループに分け、彼女たちのプロフィールデータを、時代背景に照らしながら分析、論評したものです。今でこそ50%の女性が大学進学するアメリカですが、100年前、その割合はわずかに3%。少数精鋭の第1グループは、仕事か家庭かを選択しなければならず、仕事を選択しても多くの場合、キャリアではなく単なるジョブの掛け持ちにすぎなかったとしています。ちなみにこの区分で言えば、私は最後の第5グループの先頭、直前の第4グループとの狭間にあたります。第4グループはとにかくがむしゃらにキャリアを築くことを先行させた女性たち。それに対し1980年代以降に大学を卒業した第5グループは、最初からキャリアを含めて何もかも追究していく女性たちと位置付けられています。
本書を読み通して俯瞰すると、古い社会通念と戦いながら、キャリアの追求に走り抜けた女性たちは、前の世代が果たせなかった願いと挫折で得た教訓を、バトンパスのように次の世代に伝える、まるで1つのチームのように感じます。同時に、どれだけ古い通念が砕けようと、あるいは制度やシステムが変革されようと、キャリアというのは、個人にとっての時間の「めぐり合わせ」に、どうしても翻弄されるものなのだと改めて痛感しました。
キャリアを紡ぐ時間は、「キャリアの時計」だけでなく、成熟しさらに年老いていく「生物学的な時計」と、家族と関わり家族の形を変えながらライフステージを刻む「家族の時計」、この3つの時計が同時に動いています。まさに本学のキャリア教育が掲げる「ライフキャリア」は、3つの時計で時が刻まれているのです。それぞれに縛られたり追い立てられたり、折り合いをつけるのは容易ではありません。ジェンダーギャップが遅々として埋まらない日本では、なおさら苦労は大きいでしょう。ですが3つとも自分の時計です。主体的に有意義な時を刻んでいかねばなりません。岐路に立つ度に、賢い判断、勇気ある決断が求められます。
その際に皆さんを支え、導いてくれるのは、このカトリック女子大での4年間を通じて得た知見であったり、教職員や同級生との対話の中のことばや存在そのものであったりするでしょう。さらには私が皆さんの入学式の式辞で紹介したミッション・コミットメントも、皆さんのキャリアを支えてくれるはずです。日々の営みの着実な積み重ねがキャリアを作ります。その営みの芯となるのが4つの動詞です。「尊ぶ」「対話する」「共感する」「行動する」この行動指針を大切に生きる限り、幸せなキャリアを紡げるかどうかはともかく、少なくとも誠実な人生を送ることはできるでしょう。願わくば皆さんの3つの時計が、寄り添ってキャリアの時間を刻んでくれることを心より祈っています。どうかお元気で、自分なりの人生を、大切に歩んでいってください。
2024年3月9日
京都ノートルダム女子大学
学長 中村 久美
歴史・沿革
1833 |
マザーテレジア・ゲルハルディンガーによって、ドイツのバイエルン王国にノートルダム教育修道女会創立 |
1847 | マザーテレジア・ゲルハルディンガーと4人のシスター、渡米 さまざまな困難とたたかいながら、貧しい移民の子どもたちの教育に携わる |
1948 |
米国セントルイスから修道女会の4人のシスターが京都に派遣される |
1952 | ノートルダム女学院中学校設立 |
1953 | ノートルダム女学院高等学校設立 |
1954 | ノートルダム学院小学校設立 |
1961 |
ノートルダム女子大学設立 |
1963 | 文学部生活文化学科開設 |
1979 | 本学から海外への留学始まる |
1999 |
大学名を「京都ノートルダム女子大学」と改称 |
2000 | 文学部を人間文化学部に名称変更 人間文化学科、生活福祉文化学科、生涯発達心理学科開設(生活文化学科を改組) 海外からの留学生受入始まる |
2001 | 創立40周年記念事業開催(記念式典、国際シンポジウムなど) |
2002 | 大学院人間文化研究科応用英語専攻(修士課程)開設 |
2003 | 大学院人間文化研究科 生涯発達臨床心理学専攻(修士課程)開設 心理臨床センター設置 |
2004 | 大学院人間文化研究科生活福祉文化専攻(修士課程)開設 |
2005 | 心理学部心理学科開設(生涯発達心理学科を改組) 大学院心理学研究科発達・学校心理学専攻(博士前期課程)、臨床心理学専攻(博士前期課程)開設(生涯発達臨床心理学専攻(修士課程)を改組) 心理学専攻(博士後期課程)を開設 大学院人間文化研究科人間文化専攻(修士課程)開設 |
2007 | 生活福祉文化学部生活福祉文化学科開設(生活福祉文化学科を改組) |
2011 |
2011年 創立50周年 「北山キャンパス総合整備計画」の一環としてノートルダム館(京都工芸繊維大学構内)完成 |
2013 | 心理学部心理学科現代心理専攻開設(発達心理専攻より名称変更) |
2015 |
全館リニューアル完成 創立50周年記念事業として進められてきた北山キャンパス総合整備計画により、全館リニューアル |
2016 | 徳と知教育センター設置 |
2017 | 現代人間学部福祉生活デザイン学科、心理学科、こども教育学科開設 (生活福祉文化学部、心理学部を改組) |
2019 | 国際言語文化学部英語英文学科、国際言語文化学部国際日本文化学科開設 (人間文化学部英語英文学科、人間文化学部人間文化学科より名称変更) |
2021 |
創立60周年事業開催。 2021年 創立60周年 マリアンモニュメント |
2023 |
社会情報課程開設 |