学長メッセージ/歴史・沿革

学長メッセージ

ひとりひとりと向き合い、
対話することを大切に 新しい学びを提供します

本学のモットー「徳と知」は、豊かな人間性と物事を見極める知性の涵養を示します。
小規模女子大学としてのメリットを活かし、ひとりひとりの学生に向き合う丁寧な教育、学生支援と、女性の立場からキャリアを考えるライフキャリア教育に力を入れています。文化や言語、文学、生活、心理、教育といった各学科の専門性に加え、話す力やコミュニケーション力など、社会で求められる力を養います。
京都、北山にある落ち着いた雰囲気のキャンパスで、「私らしく、誇らしく」成長していく学生を、教職員全員が温かく見守ります。

2023年度 入学式 式辞

 皆さん、ご入学おめでとうございます。
 ご家族の皆様にも、心より御慶び申し上げます。

 今年度より、本学に3つ目の学部に相当します社会情報課程が開講し、新入生をお迎えしました。情報活用の重要性を背景に、社会の要請を受けて設置した新課程です。もともと情報教育においては、京都の大学の中でも先んじていた本学ですが、社会情報課程が本学の新たな顔に育っていくことを期待しています。

 さて、その情報ですが、今やデータ流通量は飛躍的に拡大し、情報コンテンツは豊かに溢れています。それらを受け取る私たちは、1日24時間の変わらぬ枠組の中で、いかに効率よく情報をゲットするかを突き付けられているといえます。それを反映するように、「タイパ」ということばが、昨年末「今年の新語2022」で大賞に選ばれました。

 費用対効果を表す「コスパ」に対し、時間当たりの生産性をいう「タイパ」は、映画やドラマの倍速視聴だけでなく、「10分で読める本」や「ファスト教養」なるタイトルの本も出版されるほど、読書にまで及んでいます。効率よく収集した情報の、その吟味や洞察の時間までもが節約されるとしたら残念なことです。あるいはこの情報時代に時間をもてあましてはならないという、ある種の強迫観念に基づく倍速視聴やファスト読書であったとしたら、滑稽とさえいえるでしょう。

 大学4年間は、卒業要件となる単位数を揃えるという縛りはあるものの、社会に出てから求められる効率性や生産性とは、少し距離をおいた生活が可能なはずです。例えばいくつものレポート課題をこなすために、クリックひとつで効率よく獲得した情報の、倫理にも反するような安直利用は、課題によって訓練されるはずの思考力、文章作成力の獲得という生産性にはなんらつながらない、大変残念なことといわねばなりません。大局的な志なくして、そのときそのときのタイパを優先し、効率よく学業をこなしていく限り、大学生活全体としての生産性、すなわち皆さんの成長は望めません。

 皆さんには、社会に出て行く直前の4年間という時間の意味や価値を、改めて大切に考えてほしいと思います。縁あって入学された本学がその拠点になります。建学の精神は「徳と知」。能力を高め知識を身につけるとともに、人間的にも豊かに成長することを目指します。さらに目標に向かって学ぶ上での日々の行動指針として、4つの動詞から成るミッション・コミットメントを大切にしています。「尊ぶ」「対話する」「共感する」「行動する」、この4つです。これらへの理解と自らの向上心が、4年間の生産性にとって、大きな原動力になることでしょう。

 そのうえで、先生や友人とじっくり対話する機会や、ふとしたことで手に取った本を夢中で読みふけるひととき、クラブや学生会の活動に仲間と没頭する時間など、効率性とはかけ離れた豊かな時間を大事にしてください。社会で求められる思考能力は、追い立てられることのない自分なりの時間の中で醸成されるものであり、その獲得や自分の成長を自覚するのも、自己を振り返る心の余裕においてでしょう。4年間の大学生活の中で、能力の獲得や人間的成長を、自分で実感する経験を数多く積み重ねてほしいと思います。

 キャンパスが抱える施設や設備、教職員や在学生など本学に集う人たち、さらには多様な支援制度やプログラムなど、本学が有するあらゆる資源を使って、皆さん自身が主役の成長ストーリーを、それぞれ作り上げていってください。小規模だけど、本学には皆さんに気づきを与え、励ます仕組みやチャンスはたくさんあります。小規模だから、教職員は皆さんの名前を覚えてじっくり相談にのります。4年後、皆さん一人一人が、将来の希望につながる成長ストーリーと、それで得た自信をもって、卒業式に臨まれることを、期待しています。

2023年4月3日
京都ノートルダム女子大学
学長 中村 久美

2022年度 卒業式 式辞

 皆さん、ご卒業おめでとうございます。
 ご家族の皆様にも、心より御慶び申し上げます。

 2度3度と緊急事態宣言が発令されたコロナ禍の波は、ようやく終息の気配が見え始めました。本卒業式も、学生課より最初に皆さんにご案内したときは、マスク着用を求めていましたが、その後国や自治体では、大学を含めて卒業式はマスク着用を求めないこととなっています。厳格にマスク着用が求められる生活にも、そろそろ一区切りがつきそうです。

 そのマスク着用に関する本学学生の意識を、心理学科中嶋華音さんが卒業研究として調査した結果が、1月30日付の京都新聞で紹介されました。着用の見直しに向けた政府の動きに対し、調査対象となった本学学生の約半数が継続を希望しており、その着用を続けたい理由も多様であることが明らかになりました。マスク一つをとっても人によって様々な感じ方、考え方があることがわかります。そこには個別性が確かに存在するのです。

 一時期、公共の場でマスクを着用していない人を糾弾する風潮を、「マスク警察」と呼ばれたことがありました。公共のルールに従うこと、社会の原則を守ることは正義であり、その考え方のどこにも誤りはありません。

 ただし、先ほどの調査結果が示すように、人にはそれぞれ、マスクを着用できない理由や逆に外したくない理由があります。このような個別性を尊重し、違いを切り捨てることなく、個々に寄り添うような姿勢を、規範倫理学では「ケアの倫理」と言うのだそうです。社会全体のために原理、原則を全うすることは大事ですが、個別性を尊重することは、多様性ある社会では同等以上に重要なことといえるでしょう。

 ここで注意したいのは、全体の利益を守って原則を曲げない正義と、個別性に寄り添う「ケアの倫理」、これをひとりひとりが自身の中で、きちんと葛藤させているかどうかです。世間というものや空気に過敏で、かつ何かとそれに依存する日本の社会では、正義の主張にやすやすと飲み込まれる一方、それへの非難が高まると見るや、表に出したくないような個別性をもさらしてしまうほどに揺れ戻す。日本は、ともすれば同調性の波に飲み込まれやすい社会といえます。

皆さんには、原理、原則を大事にしながらも、個別性にも寄り添うことができる人であってほしいと思います。そしてそれは単なる同調ではなく、あなた自身の自立的な共感を基に、判断、行動する思慮深さであってほしいと思います

 先ほどのマスク調査のことは、京都新聞のその日の紙面から話題性のある記事をピックアップした「三十六峰」というコラム欄でも取り上げられていました。そこにはマスク着用で顔を隠し続けたいとする女子学生の心情を、世阿弥が花伝書に記した「秘すれば花」にたとえられていました。マスクの着用は、あらわに見せない奥ゆかしさにこそ美しさはあるとする美意識に通じるというものですが、皆さんにとってのマスクは、美意識として片づけられるほど単純なものではないでしょう。

 調査結果の中で、着用の継続を望む理由に「表情を隠せる」という意見が2番目に多くあげられていました。失望や落胆、嫉妬や嫌悪などの好ましくない心情が見透かされてしまう不安や、伝わりすぎることで生じる誤解への恐れや心配など、そこには複雑な心情が交錯しているようです。そのような繊細な心を持つ皆さんには、これから出ていく社会において、周囲から受ける評価や対人関係で、悩み苦しむことが多々あるかと思います。ですが、どうか自分自身の心のなかで、先ほどの正義とケアの倫理を携えて、自立的に共感し行動していく強さを身につけることによって、その不安を克服していってください。

 本学が大切にしています4つの動詞から成るミッションコミットメントの最初の動詞、「尊ぶ」は、まず自分自身への尊重や信頼を表します。本学で学んだことを糧に、自分と他者を「尊ぶ」ことから始めて、自立的な「対話」や「共感」をもって「行動」してください。そのような心がけで社会経験を積んで、さらに成長した皆さんの誰もが、自らすすんでマスクを付けない晴れやかな笑顔で、それぞれの人生を歩んでいかれるようになることを、心からお祈りしています。

2023年3月11日
京都ノートルダム女子大学
学長 中村 久美

歴史・沿革

1833

マザーテレジア・ゲルハルディンガーによって、ドイツのバイエルン王国にノートルダム教育修道女会創立
以降、ヨーロッパで、学校、幼稚園、障がい者の介護などの教育活動に携わる

1847 マザーテレジア・ゲルハルディンガーと4人のシスター、渡米
さまざまな困難とたたかいながら、貧しい移民の子どもたちの教育に携わる
1948

米国セントルイスから修道女会の4人のシスターが京都に派遣される

1952 ノートルダム女学院中学校設立
1953 ノートルダム女学院高等学校設立
1954 ノートルダム学院小学校設立
1961

ノートルダム女子大学設立
文学部英語英文学科開設

1963 文学部生活文化学科開設
1979 本学から海外への留学始まる
1999

大学名を「京都ノートルダム女子大学」と改称

2000 文学部を人間文化学部に名称変更
人間文化学科、生活福祉文化学科、生涯発達心理学科開設(生活文化学科を改組)
海外からの留学生受入始まる
2001 創立40周年記念事業開催(記念式典、国際シンポジウムなど)
2002 大学院人間文化研究科応用英語専攻(修士課程)開設
2003 大学院人間文化研究科 生涯発達臨床心理学専攻(修士課程)開設
心理臨床センター設置
2004 大学院人間文化研究科生活福祉文化専攻(修士課程)開設
2005 心理学部心理学科開設(生涯発達心理学科を改組)
大学院心理学研究科発達・学校心理学専攻(博士前期課程)、臨床心理学専攻(博士前期課程)開設(生涯発達臨床心理学専攻(修士課程)を改組)
心理学専攻(博士後期課程)を開設
大学院人間文化研究科人間文化専攻(修士課程)開設
2007 生活福祉文化学部生活福祉文化学科開設(生活福祉文化学科を改組)
2011

2011年 創立50周年

「北山キャンパス総合整備計画」の一環としてノートルダム館(京都工芸繊維大学構内)完成
キャロライン館(学生寮を含む教育複合施設)完成
創立50周年記念事業開催(記念式典・公開講座など)

2013 心理学部心理学科現代心理専攻開設(発達心理専攻より名称変更)
2015

全館リニューアル完成

創立50周年記念事業として進められてきた北山キャンパス総合整備計画により、全館リニューアル

2016 徳と知教育センター設置
2017 現代人間学部福祉生活デザイン学科、心理学科、こども教育学科開設 (生活福祉文化学部、心理学部を改組)
2019 国際言語文化学部英語英文学科、国際言語文化学部国際日本文化学科開設
(人間文化学部英語英文学科、人間文化学部人間文化学科より名称変更)
2021

創立60周年事業開催。
現代人間学部生活環境学科開設(福祉生活デザイン学科より名称変更)

2021年 創立60周年

マリアンモニュメント
同窓会からの寄付金をいただき、キャンパス南西角にマリアンモニュメントを設置

2023

社会情報課程開設

 

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