こども教育学科

二平方メートルの世界で

2023-11-21
学科のまなび

「二平方メートルの世界」とは、どのような世界だと思いますか。

この「二平方メートル」というのは、病室のベッドの広さです。病気で入院している子どもたちの世界を表しています。北海道に住む当時小学3年生の前田海音さんは、3歳から脳神経の難病で入退院を繰り返していました。ある日、ベッドのオーバーテーブル裏に、これまで同じベッドを使った子どもたちのメッセージを見つけます。この言葉を伝えないと意味がないと作文にしたのが、第11回子どもノンフィクション文学賞の大賞に選ばれ、それが絵本となりました。(前田海音文 はたこうしろう絵『二平方メートルの世界で』小学館2021年)

 この作文では、「この二平方メートルの世界で、同じテーブルを使って過ごしたたくさんの誰かが確かにここにいて、私に語りかけてくれた。ひとりじゃないよって。」と元気付けられた中で、病室での孤独と葛藤、家族への感謝が綴られています。

 海音さんの作文を、特別支援教育を学んでいる学生のみなさんに読んでもらい、感想や考えたことを述べてもらいました。

 みなさんは、病気という厳しい現実の中で生きていることから出てくる言葉に胸を打たれ、小学3年生でありながらとても深い洞察に驚きを感じていました。

 海音さんの「さみしさ」とそれを誰にも伝えられない、家族に迷惑をかけていることを思い伝えてはいけないという気持ちで、その気持ちをあきらめていることに病気の子どもが抱える難しさを知った。人と人のつながりが入院中の子どもにとって大きな励ましになり、そのつながりを求めていることを知り、どうすればそのきずなを築けるかなど、病気の子どもの気持ちを知った中で、自分に何ができるかを考えた人も多くいました。また病気のある子どもたちも、できることを伸ばせるような環境をつくること、そして少しでも毎日の生活が楽しいと思えるように支援していくことが大切であると考えた人もいます。

 この作文では教育については触れられていませんが、日本では病気で入院しても教育を受けられる病弱教育の制度があります。

江川正一

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