心理学科

心理学をキャリアに活かす:リレーコラム ―学会発表編― 心理学研究科修了生の学会発表(日本心理学会第87回大会)

2024-02-15
研究

 心理学科心理学研究科では、本学で心理学を学び卒業した先輩たちが、その学びを活かしてどのように働いておられるのか、コラム形式で紹介します。
 今回は学会発表を行った先輩からのコラムです。
 

 2023年9月に開催された日本心理学会第87回大会(神戸で開催)にて、2名の心理学研究科修了生がポスター発表を行いました。初めての学会発表を経験したお二人に、学会ではどのような研究内容を発表したのか、そして学会発表の感想を尋ねました。また、各学会には個性もありますので、(後輩の参考のためにも)日本心理学会の会場の様子を聞いてみました!

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1.Kuさん
① 研究内容
 今回私は、幼児(3~5歳児)との関わり行動の中で、青年にとって抵抗感が強い行動を調査し、幼児に関わることへの抵抗感と、「幼児への関心や関わりへの感情」「曖昧さへの態度」との関連について検討した内容を発表しました。対象としては、大学生および専門学校生の計210名(女性177名、男性30名、無回答3名)に質問紙/Webにてアンケート調査を実施し、回答をしていただきました。
調査結果を分析したところ、幼児との関わり行動(34項目)の平均値の高低から、関わり行動の平均値が低い人の方が世話やしつけ等、幼児に注意を向けながら、統制や制限を課すような行動への抵抗感が強いことが分かりました。
 また、関わり行動への抵抗感と「幼児への関心と関わりへの感情」「曖昧さへの態度」について、関連しているのかを検討するために相関を求めました。結果、幼児と関わったり、接近したりということに対して抵抗感が強いと、幼児に対する関心が低かったり、『うるさい』『汚い』などのように思うことが多いということが分かりました。加えて、曖昧なことが多い状況に対してどうしたらいいかわからないと混乱したり不安になったりしやすいことも示されました。一方で、幼児への関心が高いと、曖昧なことが多い状況を楽しもうとしたり、曖昧なものを曖昧なままで、そういうこともあると考えたりする傾向が強いことが示されました。
 以上から、幼児に対する興味や関心を高めたり、幼児と関わる時に生じる曖昧さに対しても『おもしろい』と思えることが、青年の感じる幼児への関わり行動に対する抵抗感を減らすことにつながる可能性が示唆されました。
 まだまだ検討しなくてはいけない部分はたくさんあるので、今後も引き続き研究していけたらと思っています。

②学会発表を経験して
 発表の仕方には色々とありますが、私が今回行ったのはポスター発表で、プリントアウトして持参した大きなポスターをパネルに貼り、その前に立って興味を持ってくださった方に説明するという形式でした。
 正直なところ、2〜3人の方が興味を持ってくださったらいいかなと思って参加したのですが、思っていた以上に見に来てくださる方がいて、2時間という持ち時間があっという間に終わりました。内容について質問や意見をいただくことで考察を深めるきっかけになったり、自分ではぼんやりしていた部分が輪郭を得たりして、貴重な機会になりました。研究内容について意見をいただける機会は多くはないので、ありがたいと同時にとても楽しい時間でした。

③学会や当日の会場の様子
 日本心理学会という心理学領域の中でも大きな学会の大会だったため、多くの方が参加されていました。ポスター発表以外にシンポジウムや講演などもあり、人気のところは後ろの壁際で立ち見される方がたくさんいらっしゃることもありました。色んなプログラムに皆さん気軽に出入りしていた印象です。
 9月とはいえ外はかなり暑くて、会場内は割と涼しくされていたので、いかに服装で調整するかという感じでした。基本的に普段着で参加されている方が多く、発表がある場合はスーツやオフィスカジュアルといった服装の方が多かったです。会場の一部に食事ができるような休憩場所があり、自由に飲めるお水が設置されていて、各々休憩したりお話ししたりしていました。
 一角には主に心理学に関する書籍が販売されているところもあって、主に専門書を吟味出来たり、書店によって様々ですが10~20%引きで購入できたりします。最高です。その場の雰囲気や割引に引っ張られて買ってしまうことが多いと思いますので、会場参加される場合には、リュックなど大きめのかばんで参加されることをお勧めします。

 

ポスターの前で(Kuさん)

会場で質疑応答中

2.Kiさん
①研究内容
 学会にて発表した研究の内容は、メンタルヘルス不調に関する相談行動をより促進させるために、友人や家族、専門家への相談行動の意思決定プロセスを調べ、相談行動を促進もしくは、抑制する規定因を明らかにすることを第1の目的とし、また、相談相手によって意思決定プロセスに差異があるかについて調べることを第2の目的としました。先行研究で明らかにされたリスク回避行動のプロセスを参考に、新たなメンタルヘルス不調に関する相談行動プロセスの仮説モデルを構築し、検討しました。
 その結果、メンタルヘルス不調に関する友人や家族への相談行動のプロセスは、不調を放置することへの危機感が、行動を起こすべきという目標意図を高め、目標意図が、不調の放置に対する周囲からの評価と共に、相談行動を意図させ、そして行動を忌避する態度を抑制し、相談に至るということが分かりました。また、専門家への相談行動のプロセスは家族や友人とは異なり、専門家に相談する人が周囲にどれぐらいいるかの認知が低い場合、相談行動を意図させず、行動を忌避する態度が促進され、相談に至らないということが分かりました。

②学会発表を経験して
 研究を学会発表したことにより、様々な専門領域でご活躍されている方々から研究についてのご意見をいただくことができました。実際に対面で研究についての反応や、様々なご意見をいただいたことにより、研究し、それを発表することの意義を改めて感じることができる貴重な体験でした。この気づきは学会に参加したことにより得られたので、本当に参加して良かったと思っております。

③学会や当日の学会会場の様子
 今回、私がポスター発表させていただいた学会は日本心理学会でしたので、基礎から専門領域まで本当に広い領域における心理学研究のポスター発表や、シンポジウムが行われていました。また、広い倉庫のような会場がいくつもあり、老若男女たくさんの方々が参加されていました。ポスター発表の際は、研究に興味を待たれた方や、質問に来られた方のために、研究内容を説明したり、名刺交換などをしたりして、気づけばあっという間に2時間過ぎていました。最初は、初めての学会参加でとても緊張していましたが、学会に参加されていた大学の先生方が鼓舞しに声をかけてくださったおかげで緊張は緩和され、研究に興味を持ってくださった方々と有意義で興味深い意見交換ができ、最終的には時間が過ぎるのを忘れてしまうぐらい熱中した時間を過ごすことができました。
 

パワーを注入しに来てくださった先生方と記念写真

       
ポスターの前で

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 お二人とも学会会場では様々な研究者、他大学の学生・院生等と議論することが出来、とても有意義な時間を過ごしたようです。自身の研究について、質問を受けたり、助言を頂いたりすることを通して、学内とはまた違った学びがあったことと思います。
 今後も大学院生(学部生の皆さんも!)が積極的に学会の場で研究発表を行い、自分の研究を社会に発信してくれることを期待しています。

 以上、先輩から後輩に向けてのコラムとメッセージでした。

 公認心理師・臨床心理士は現場での自らの実践を振り返り、過去の知見と照らし合わせることが求められます。その上で、後の時代に役立つ知見を一つ一つ、積み重ねていくことが求められています(巨人の肩の上に立つ、と言われたりもします)。今後も多くの先輩たちが学会発表にチャレンジしていきますので、後輩・後輩になる予定の皆さまも“先輩の肩の上に立つ”意識を持ってもらえたらと思います。

 それでは、次回もまたご期待ください。

担当:本学心理学研究科修了生 Kuさん、Kiさん、松島るみ、広報担当

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