こども教育学科

京都に息づく伝統色と言葉

2023-05-29
学科のまなび

 「何か落ち着くわ。でも,京都はコンビニがどこにあるか分からんね。」福岡から遊びに来た友人が言った。言われてみると,確かにその通りだと思った。京都が人の心を落ち着かせるのは,寺社仏閣や歴史的な建造物など古都の風情が漂っているのと同時に,人々がその景観を守り続けてきたからであろう。市街地のほぼ全域で建物の高さや色などが制限されている。コンビニが見つかりにくいのも,それが京都の景観に溶け込んでいる証拠である。

 私が,京都に来て心に落ち着きを感じたのは,地元民にも観光客にも必須の交通手段である京都市営バスの色である。二種類の落ち着いた緑色。これらの緑色の名前を調べてみると,車体は若草色,曲線は濃緑色だという。日本の伝統色は260種類以上,一節には1000種類以上もあるらしい。緑系の色でも,裏葉色,青竹色,常盤色など枚挙に暇がない。このように表現豊かな伝統色は,海山の自然に恵まれ,四季折々の変化がある日本という環境を象徴している。その変化に敏感に気づき,そこから色の名前を生み出した日本人の言葉の豊かさに驚かされる。京都の景観には,日本の伝統色が息づいているようだ。

 もうすぐ,紫陽花の季節。紫陽花の色は,土の酸性度によって決まるのだが,それは科学的な話。今年は,その色を注視して,色辞典なんかを片手に,日本の伝統色の美しさ,それを表す言葉の美しさを感じてみてはいかがだろうか。

廣口 知世

過去のブログサイトはこちら

Scroll up