心理学科

心理学をキャリアに活かす:リレーコラム―学会発表編―心理学研究科修了生の学会発表(日本コラージュ療法学会第15回大会)

2024-02-28
研究

 心理学科心理学研究科では、本学で心理学を学び卒業した先輩たちが、その学びを活かしてどのように働いておられるのか、コラム形式で紹介します。
 今回も前回に引き続き、学会発表を行った先輩からのコラムです。

 日本コラージュ療法学会 第15回大会は、2023年12月10日(日)に龍谷大学 大宮キャンパス 東黌(とうこう:東校舎)を会場として開催されました。学会発表を行った修了生に、学会で発表した研究内容や、学会発表についての感想を尋ねました。また、コラージュ療法学会の特徴や学会当日の様子についても聞いてみました! 

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どういった内容の研究発表を行ったのですか?

 本研究は、コラージュ作品に関する基礎的資料を得ることを目指し、女子大学生のコラージュ作品の「切り方」「貼り方」といった形式的特徴、「人物」「風景」など個々の切片の内容的特徴を性格特性(Big Five)との関連について、コラージュ療法基本材料シート集を用いて材料を統制して検討しました。

 次の3つの仮説を立てて調査を行いました。【仮説1】「切片数」は情緒不安定性が高い人の方が多いだろう。【仮説2】「重ね貼り」は情緒不安定性が高い人の方が多いだろう。【仮説3】開放性が高い人の方が「電車」を貼り付ける人が多いだろう。本研究はコロナ禍中に行われたため、大学生、大学院生の女性計25名を対象に、手渡し、もしくは郵送による質問紙調査と実験を行いました。

 その結果、切片数、重ね貼りと性格特性との関連はみられませんでした。切片数は各個人が何を好み、何をどれだけ表現したいのかによって、切片数が左右されるのではないかと考えています。重ね貼りについて仮説と異なる結果になったのは、用意された材料の数や自宅など自分が取り組みやすい場所で行ってもらったことが要因としてあるのではないかと考えています。性格特性と関連の傾向がみられた切り抜きは、それぞれ関連のみられた性格特性と類似した印象や象徴性を持っているようです。また作品に比較的使われた切り抜きは、気分や心的エネルギーの状態、個人の好みが反映されていると考えます。

 以上のことから、作品の意味内容と性格特性との関連が示唆されましたが、性格特性だけでは作品を読み取ることは出来ないこともわかりました。そのため、作品から制作者を理解するにあたっては、作品のテーマや印象、制作時の気分、制作者の語りなど様々なことを加味して見る必要があると考えています。

学会発表をしてみてどうでしたか?

 今回の発表は、私が大学、大学院生時代にゼミの指導をしてくださっていた佐藤睦子先生との共同発表ということで、佐藤先生が横について下さりながらの発表でした。また、同期や先輩・後輩も応援に駆けつけてくれていたので、緊張もありつつも落ち着いて発表出来ました。

 発表の場からは、一人一人のお顔が見えていたので、真剣に興味を持って聴いてくれていることが伝わってきました。質問が少なくて時間を持て余すことを危惧していたのですが、想定していた以上に質問してくださった方がいて、驚きと嬉しさがありました。意見や感想から、また研究する機会があるのであれば活かしていきたいな、と思える学びもありました。

                   

発表スライドの前のKiさん  

  フロアからの質問に応じるKiさん(共同発表者の佐藤睦子先生と共に)

日本コラージュ療法学会の特徴や当日の学会会場の様子をお聞かせください!

 学会発表当日の午前中は参加者の皆さんが1つの部屋に集まって、講演やシンポジウムに参加されていました。午後は前半に基礎研究の発表、後半に事例研究の発表がありました。基礎・事例ともに研究発表が2つずつあったので、どちらか気になる方に参加するという形でした。なので、魅力的な研究を前にしてどちらかを選ぶのが難しく、私は時間ギリギリまで悩み続けていました。

 学会発表の前日にはワークショップが開かれており、コラージュ療法についての講義や体験的に学ぶ場が設けられていました。久しぶりに自分でコラージュを作って、参加者の皆さんと共有した時間はすごく楽しかったです。

 全国各地から、医療、福祉、教育等の様々な職種の方が参加されており、コラージュ療法が色々な人に興味を持たれていることを実感しました。コラージュ療法に興味のある方は是非ワークショップや大会に参加していただければな、と思います。

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 以上、先輩から後輩に向けてのコラムとメッセージでした。

 日本コラージュ療法学会のホームページによると、コラージュ療法とは、“心理療法の一分野である芸術療法に属する方法である。・・・(中略)・・・芸術の技法のひとつであるコラージュ(切り貼り遊び)を主として利用しようとするものである。”と紹介されています。Kiさんも記してくれていますが、コラージュ療法は医療、福祉、教育等の分野でも活用されているようで、今回のKiさんの研究にも様々な職種の方が関心を持って下さったようですね!

 コロナ禍中で研究を遂行することには苦労もあり、様々な工夫が必要であったかと思います。本研究の知見や今回の学会発表での経験が、Kiさんの今後の研究や臨床実践の糧となりますように・・・益々の活躍を期待しています!

 それでは、次回もまたご期待ください。

担当:本学心理学研究科修了生 Kiさん、向山泰代、広報担当

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